農産物輸出8139億円に、だが実態は? 2018年1月~11月2019年1月24日
農水省は、2018年11月および1月から11月の農林水産物・食品輸出の速報値をまとめた。
(上のグラフをクリックすると大きなグラフが表示されます。以下、同じ)
政府は、農林水産物・食品の輸出額を2019年に1兆円突破させる目標を掲げているが、12年以降増加傾向にあり、17年に8071億円に達し、18年は11月までで8193億円と1兆円に迫る勢いとなっている(図1)。 11月の農林水産物・食品の輸出実績 (速報値)は、前年同月より9.1%多い852億円で、うち、農産物が522億円、林産物が34億円、水産物は295億円となっている(表1)。
1月から11月までの輸出総額8193億円のうち農産物は5092億円で全体の62%を占め、林産物343億円、水産物2757億円となっている(表1)。農産物の内訳は表2の通りとなっているが、農産物輸出の55%、2808億円が日本酒などアルコール飲料、ソース混合調味料、清涼飲料水など「加工食品」となっている。そしてタバコや緑茶など「その他」が945億円(18%)でこの2分野で農産物輸出の約4分の3を占めている。 分野に関係なく輸出金額の多い品目をみると、第1位がアルコール飲料で564億円、2位がホタテの434億円、3位が真珠で341億円、4位がソース混合調味料294億円、5位が清涼飲料水258億円で、加工食品と水産物が上位5位を占め、農林水産物・食品の輸出の太宗は耕種農業ではないことがみてとれる。
そのなかで、米は商業用の米の輸出数量が1万2296t、前年同期比18%増。金額は33億3500万円と同17%増加し過去最高を記録した昨年同期を上回った。また積極的に輸出を促進している牛肉は、215億円と同33.3%と伸長している。その他の品目ではイチゴ(同40.4%)、かんしょ(同48.6%)と伸びていることが注目される。 1月から11月で、輸出額が多かった相手先は、香港が1位が1916億円で前年同期比15.4%増。2位が中国で1204億円(同34.7%増)、3位は米国で1070億円(同6.3%増)で、1000億円以上はこの3国・地域だけだ。10位までとEUを含めたデータは表3の通り。この中で輸出が伸びている、中国、ベトナム、フィリピン、香港の今後に注目していく必要があるのではないか。また、この表でもわかるように輸出品目が多いのは、アルコール飲料、ソース混合調味料など加工食品と水産物が圧倒的に多いといえる。
確かに政府が目標とする1兆円は今年度中(3月末)に達成する可能性が高いが、そのことは一部の日本の耕種農業を担う経営にはプラスとなっているのだろうが、多くの生産者・経営にとって「所得向上」につながっているのかは甚だ疑わしいといえるし、「農業は成長産業」というフレーズも寒々しく聞こえるのは、記者だけだろうか。
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