集落機能強化加算 継続を提言 中山間地域フォーラム2024年9月27日
特定非営利活動法人中山間地域フォーラム(生源寺眞一会長)は9月24日に「中山間地域等直接支払制度の集落機能強化加算の廃止に関する意見書」を武村展英農林水産副大臣に提出した。
農林水産省は2025年度予算概算要求で中山間地域等直接支払制度で集落機能強化加算を基本的に廃止することを明らかにした。
一方、現行の基本計画では「地域コミュニティーの維持や強化」を推進するとされ、集落機能強化加算はこうした方向を具体化した支援策として集落機能強化加算が措置された。
同フォーラムの意見書では、このような経過で新設された制度であり、さらにその成果について第三者委員会など検証しないまま短期間で廃止することは「朝令暮改であり、基本計画との整合性および政策形成の透明性からみて重大な問題がある」と批判している。
また、集落機能強化加算は、すでに高齢者の見回りや買い物支援などに活用されており、加算廃止の方針は「現場に大きな失望と混乱をもたらしている」と現場の実態を指摘している。
農水省は25年度概算要求では「ネットワーク化加算」を新設し、集落のネットワーク化や統合などを支援するとしており、この措置でこれまでの集落機能強化加算も実質的に継続するよう検討するとしている。
これに対して意見書では、集落機能強化加算は「「くらし」の視点を含めて集落機能の強化を図っていこうとする別個の措置」だとして、「個別で集落活動を行う取り組みを、ネットワーク化に取り組まないとの理由で支援しない理由はまったくない」と指摘し、この加算項目の廃止によって、現行基本計画で盛り込んだ地域コミュニティーの維持や強化の重要性が「地域の現場に伝わらなくなる影響は極めて大きい」と警鐘を鳴らしている。
当日は同フォーラムの野中和雄副会長と榊田みどり副会長が武村副大臣に意見書を渡した。榊田氏に今回の問題点を聞いた。
【中山間地域フォーラム副会長・農業ジャーナリスト 榊田みどり氏の話】
中山間地域等直接支払制度は、農業生産の条件不利補正が目的とされるが、兼業や高齢の農家が多く、営農と生活が一体的な中山間地域では、生活環境を支えることが営農維持にとっても不可欠だ。だからこそ、農業生産と集落機能維持のための農村政策の一体化が大前提になってきた経緯があり、食料・農業・農村基本計画では地域コミュニティ機能の維持・強化の推進が盛り込まれ、22年の「新しい農村政策のあり方に関する検討会」でも集落機能強化加算のさらなる活用が強調されてきた。
農水省は、集落機能の維持は重要としながらも、この加算措置を廃止し農村RMO関連事業に移行する方針を打ち出した。現場の混乱を受けて、9月には、新設されるネットワーク化加算に集落機能強化加算を内包・再編する方針に転換したが、他の集落協定との連携が要件となり、現在、この加算措置を原資にしてきた集落協定すべてが活動継続できるか不透明だし、新規に取り組もうと考えていた集落協定には門戸が閉ざされる。意見書提出の際、武村副大臣から「頑張っている人たちが取組みできなくなるようなことはあってはならない」「これまで積み重ねられてきた議論を足蹴にするつもりはない」との話があった。今後の農水省の対応を注視したい。
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