【農協研究会 研究大会】報告(2):研究者からみた新基本計画 安藤光義東大教授2025年6月3日
5月31日に開かれた農協研究会の研究大会で、東京大学大学院農学生命科学研究科教授の安藤光義氏が「研究者からみた新基本計画 食料安全保障と担い手」をテーマに報告した。以下はその要旨である。
農水省・川村仁政策課長
輸出は食料安保に寄与するか
基本計画の狙いの一つは輸出の促進だ。輸出は改正基本法では5つの理念の一つである「食料安全保障の確保」の中に埋没していたが、基本計画では柱に格上げされた。
輸出の促進が重視されたのは基本計画が初めてではない。基本法改正前の2022年9月、岸田政権の食料安定供給・農林水産業基盤強化本部で示された「新しい資本主義の下での農林水産政策の新たな展開」で「輸出促進」が2番目に掲げられた。
輸出促進はもともと官邸案件であり、基本法改正時は食料安全保障に潜り込ませていたのが、基本計画で表に出てきたに過ぎない。しかし、これが本当に食料安保に寄与するのか。
基本計画で輸出の促進は「海外から稼ぐ力」の強化という副題がついている。「稼ぐ力」の強化が示すように、目的は輸出拡大による貿易黒字・経営収支黒字への貢献であり、国民のための食料安保というよりは食品産業の輸出支援にすぎない。
政策が重視するのは生産から流通、販売に至るサプライチェーンであり、基本計画には「食品産業を魅力ある産業とすることで輸出に積極的に取り組む農業者や食品産業を増やす」との記述があるが、ここから生産現場の記述がなくなり、農業者が後景に退いていく。
輸出について設定された目標のうち、食品産業の海外展開による収益額3兆円は、農業生産基盤の維持・強化には直接的に関係ないことは明らかだ。輸出重点品目29のうち、トップ3はソース混合調味料、清涼飲料水、菓子で、いずれも現在の5倍額を目標としているが、この3品目はいざという緊急事態にどれだけ役に立つのか。
求められているのは「外貨を稼ぐ」力ではなく、物的な農業生産力の強化であり、それを通じた生産量の増大ではないか。
地域別の数値が欠落
基本計画では農地面積を2030年に412万ha維持し、担い手への農地集積率7割を目標としている。しかし、地域別の数値目標が必要だったのではないか。北海道では農地集積は課題ではなく、重要なのは後継者がいない経営の第三者継承となっている。一方、都府県の中山間地域では農地の受け手がいないため、この目標は実現不可能となっており、求められているのは条件不利地域でも経営が成り立つような支援措置だ。
幅広く「農業を担う者」
農業経営基盤強化促進法の改正で「農業を担う者」の対象を広げたが、基本計画では中小規模の家族経営や半農半Xは施策の対象外とされ、「効率的かつ安定的な農業経営」を重視する従来の方針どおりだ。基本計画では「持続可能な農業構造」の姿は示されておらず、「持続可能な農業経営体」でしかない。
逆に、幅広い「農業を担う者」の頑張りなくしては、5年後の国内供給量の確保は危ういのではないか。地域計画は国のリーダーシップのもとで分析、検証するとしているが、必要なのはトップダウンによる強制ではなく、農村の現場からの内発的な取り組みであり、それを誘発、促進するようなボトムアップ型の政策である。
食料危機は国内要因か
令和の米騒動は国内農業の供給力の衰えが原因であり、食料危機の要因は海外ではなく国内ということはないのか。水田政策の根本的な見直しが行われるが、「水活」廃止は大規模水田作経営に甚大な打撃を与える。「水活」は主食用米を作付けることができない水田を維持してきた。その廃止は担い手から梯子を外す。水活を廃止するのであれば、ゲタ対策の単価引き上げは必須だ。これがなければ麦、大豆、飼料作物は増産しない。警鐘を鳴らし続け、軌道修正を図るよう働きかけていく必要がある。
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