【農協研究会 研究大会】報告(1):政策担当者が語る新基本計画の焦点 農水省・川村仁政策課長2025年6月3日
5月31日に開かれた農協研究会の研究大会で、農林水産省大臣官房政策課の川村仁課長が「政策担当者が語る新基本計画の真髄と今後の農政の方向」をテーマに報告した。以下はその要旨である。
農水省・川村仁政策課長
「人」「農地」「消費」
今回の基本計画策定では大きく3つに心を砕いた。
1つ目は「人」で、基幹的農業従事者は111万人いるが、平均年齢は69.2歳だ。70歳以上が67%、60歳~70歳が21%という年齢構成で高齢者のリタイアで農業者が減少、とくに稲作農家が早いスピードで減少する懸念がある。
そこで今回の基本計画で重視したのが少ない人数でも農業生産を維持してわが国の食料安全保障を確保していかなければならないという前提に立って、自動化や大区画化など生産性の抜本的な向上が必要だとした。小農切り捨てということではなく、少ない人数でも食料をきちんと供給しなければならないとの考えだ。
2つ目は「農地」。食料自給率が70%を超えていた時代は人口は1億人を下回っていた。現在は1.2億人で、今の食生活のまますべて国産で賄おうとすると、現在の農地の3倍が必要になる。わが国の農地の制約からして非現実的であり、国内生産をしっかり増やすが、併せて国内で生産できないものについては安定的な輸入と備蓄を組み合わせていく必要があるということから、食料自給率目標に加え、輸入、備蓄、肥料などの生産資材がどういう状況にあるかをなども含めて食料安全保障に関する30の目標と80のKPI(重要業績評価指標)を設定した。これを毎年検証して総合的に食料安全保障の確保状況を検証していくことにした。
今までの基本計画は10年後の計画を立て、5年ごとに見直していた。そのため10年先に目標が達成できていたのかどうか、実は検証したことがなかった。それを反省し、今回からは5年先の計画を策定し毎年、KPIを検証し目標の達成度を評価していく。
生産性向上は不可欠
3つ目は「消費」。わが国の食市場の規模は人口減少や高齢化にともない縮小し、需要量は減少する見込みだ。そのため限られた427万haの農地をフルに活用して、まず輸出をしていかなければならないと考えている。輸出をしていくためには生産性を向上させ、国内にも安定的に供給するには生産費を下げて安価な価格で提供する必要がある。とくに輸出するには60kg9500円程度に下げていかなければならず、生産性向上は避けられない。飼料用米も一部評価を受けており、養豚などで活用されている。ただ、飼料用米に比べて青刈りトウモロコシは労働生産性が7倍で飼料自給率向上効果は2倍という特徴もあるため、これらも生産振興しながら日本の飼料自給率を高めていきたいと考えている。
初動5年で構造転換
新たな基本計画のもっとも重視していることは、初動5年間で農業の構造転換を集中的に進めるということだ。生産性向上を図っていくためには将来への投資としての農地の集積、集約化や共同利用施設の再編、スマート農業機械の導入、多収米の品種開発などを集中的に行っていくことが将来の農業のために重要だと考えている。農地は15haへの集約化をめざす。そのために予算も含めてしっかり確保していくこととしている。
これらを進めていくうえで水田政策を2027年度から根本的に見直していくことにしている。具体的には水田活用の直接支払交付金を水田に限らず作物ごとの生産性向上への支援と転換する。また、同時に環境支払い交付金や中山間地域直接支払交付金なども同じタイミングで整理していきたいと考えている。
マーケットメイクで輸出
2つ目のポイントは輸出拡大でマーケットイン、マーケットメイクの観点から新たな輸出先の開拓に取り組む。3つ目は「国民一人一人の食料安全保障」の確保で総量だけではなく一人一人に行き渡ることが大切だという考えだ。4つ目が食料システム全体で環境負荷の低減を図りつつ多面的機能を発揮することだ。5つ目は「総合的な農村振興」で農業分野以外の、たとえば金融機関と農村との新結合により農村を維持していく方向も打ち出した。
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