【農協研究会 研究大会】報告(4):"適正価格"は生産工程やコストを知ることから グリーンコープ生活協同組合連合会専務理事 片岡宏明氏2025年6月2日
5月31日に開かれた、農協研究会の研究大会で、グリーンコープ生活協同組合連合会の片岡宏明専務理事が「生協から見た新基本計画 米騒動下の食料安保と合理的な価格形成」をテーマに報告した。グリーンコープは食料生産と価格形成に生協と組合員が直接関わる仕組みに挑戦し、生協自ら投資して、びん詰め牛乳や飼料の工場、酪農場を作っている。
グリーンコープ生活協同組合連合会 片岡宏明専務理事
国民の食料を国内で確保する
基本法の最大の問題は、国が国民の食料を国内で確保しようとしていないこと。かつては一次産業が生活や社会を形成したが、今は二次、三次産業が中心となり、食べ物の価格が不当に低く見られる。私たち自身が食料の価格を考え、食べ物の価格を起点として生活や社会のあり方を考え、自ら変わっていく必要がある。
生産者が継続できる「再生産可能な価格」で産直を推進してきたが、気候変動で米や野菜が作れない状況に直面し、生産できる環境自体が失われつつある。そのため、生産者とともに食べ物生産に深く関わることが「解」だ。単なる消費者ではなく、自分事として捉え、行動に移す。協同組合の三原則に基づき、新たな経済を創造し運営していくことに取り組む。生協が一次産業に投資し、従事し、経営する。その食べ物を消費することで価格形成にも参加する。
きっかけは、びん詰め牛乳。組合員の願いから20年前に開発・販売を開始したが、メーカーの都合で製造が不可能になった。そこで、自分たちで出資して牛乳工場を建設して生協職員が生産に携わり、酪農家と協力して酪農場も運営し、飼料工場(TMRセンター)も出資して建設した。飼料の国産化のため、産直の米や青果の生産者に飼料作物の生産を依頼し、食品メーカーの食品製造の副産物も活用する。
農協、酪農組合と基本協定
出資により、飼料や生乳の価格、工場コストなどを理事会で議論して組合員価格を決定する。食料が作られる過程やその価格構成を深く理解し、利用することにつながる。消費者が考える適正価格は、生産工程やコストを知ることで形成される。米作りも実現すれば、農家や農協の話を自分事として捉え、米の価格を考えるようになる。
農村の持続と発展と地域の再生を目指して、下郷農協と耶馬渓酪農組合との間で基本協定を結んだ。地域を組合員や消費者の「食べ物のふるさと」に位置づける。人手不足の農家にも餌用の作物の生産で協力してもらい、堆肥は畑に還元し、生乳はヨーグルトやアイスクリーム、加工品の原料になり、加工品の食品製造副産物は餌に活用する。生産性を高め、納得いく価格を作る循環を酪農から構築する。
食料生産を自分事としてとらえる
総事業費6億円を投じたTMRセンターは2024年10月から稼働。外国産の酪農用飼料価格は、為替など国際情勢に影響を受けるため、国産化を目指し、重量比63%を国産で賄う。酪農の耶馬渓ファームは来年6月に開場予定で、年間8000トンの生乳を生産し、グリーンコープの牛乳は自給できる循環型システムができる。
グリーンコープの組合員が消費する食料で、現在は約8289ヘクタールの農地を維持している。日本の耕作面積の0.2%に相当し、「日本の農業を守ろう」というスローガンを体現している。食料の生産を自分事として捉え、生協として共同購入をしていくことが、自分たちや子どもたちの食べ物を守ることに繋がる。
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