農政:世界の食料は今 農中総研リポート
【世界の食料は今 農中総研リポート】エガリム法によるフランス農協への影響② 小田志保主任研究員 2023年12月28日
「世界の食料は今」をテーマに農林中金総合研究所の研究員が解説するシリーズ。今回は主任研究員の小田志保氏が「エガリム法によるフランス農協への影響」をテーマに解説する。
【世界の食料は今 農中総研リポート】エガリム法によるフランス農協への影響① から
農林中金総合研究所
主任研究員 小田志保氏
3. エガリム法の導入により減少する農協のマージン
こうした制度改正は農協のマージン減少の懸念がある。
まず、集出荷段階では、組合員は農協に対し、農産物の代金支払いを増やすよう働きかけやすくなった。問題は、同法のもと組合員は、民間企業と農協とを同一視し、生産者価格のみで議論するようになったことである。このことは、農協の代金支払いはプール精算で、取引価格に販売量を乗じた売上高で計算する実態と乖離(かいり)している。日本の飲用牛乳ワーキンググループでも、価格上昇で需要減退といった需給調整にかかる課題が認識されている。さらに、民間企業と違って、伝統的に全量買い取りを行うフランスの農協は、調達量を管理しにくく、生産者価格を上げると、農協の所得は減ってしまう。
なお、エガリム法の下では、生産資材価格が下がれば、メーカー卸売価格や小売価格も下がることになる。しかし、営農指導事業を行うフランスの農協や、農業者支援の観点から、生産者価格を切り下げることは容易ではないようだ<注8>。
つぎに、川下の小売業等との交渉である。同法のもと、最終製品の原料の国産農畜産物に由来する部分については、食品メーカーは小売業との価格交渉を行わず、資材価格の変動をそのまま反映する。その結果、それ以外での価格交渉、つまり農協の経費に基づいた小売業との価格交渉は一層タフなものになってしまう。
巨大化しグローバル化した農協は、民間企業と違いがないとの批判もあろう。しかし、全量買い取りやプール精算などの、独自の仕組みを持つ農協は同法の導入でマイナスの影響を受け、フランスの農業・農協の競争力低下が懸念される。こうした事例から日本に示唆される点を挙げるならば、サプライチェーンでの適正な価格形成は、需給調整機能を果たす組織の役割とともに議論されるべきということであろう。
<注>
8.農中総研(2023)に依拠。
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