【Jミルク脱粉在庫対策】基金初発動1.2万トン削減 なお過剰重く2025年12月25日
酪農・乳業界で構成するJミルクは24日、生乳需給改善へ脱脂粉乳1万2000トン削減を発表した。需給変動リスク基金初年度目からの発動という異常事態だ。国の対応強化も含め、国産牛乳・乳製品需要拡大へ着実な実施が問われる。(農政ジャーナリスト・伊本克宜)
脱粉在庫削減に業界挙げた需要拡大も共通認識となっている(2025年11月12日の酪農乳業8団体合同会見で)
■まず「第一弾」は年明け3カ月
基金発動は、まず第一弾として年明け2026年1~3月の25年度第4四半期3カ月間。酪農経営の安定を図るため生乳需給変動リスクに対応する「酪農乳業需給変動対策特別事業」の一環だ。
対象数量は1万2000トン(製品換算)。輸入飼料代替7000トンと輸入調製品切り替え5000トンの「2段構え」。
在庫削減の主力は飼料の輸入代替、国産切り替えだ。具体的にはJA全農と全酪連の全国連が乳業メーカーから国産脱粉を購入し、輸入脱粉を使う飼料会社に販売して在庫を削減する。さらに、乳業メーカーが商社などに輸入調製品の代わりの国産脱粉を販売する。いずれも国産と輸入品との差額を基金で助成する。価格差は相当額となるが、基金造成の範囲(初年度21億円)での対応となる。
■基金初年度対応の"異常事態"
Jミルクが今年度設立した需給変動リスク基金は、現在の脱粉在庫累増といった需給緩和期に対応したものだ。だが、初年度からの発動は現在の生乳需給の危機的状況を示す。
乳製品過剰問題は、22日に正式決定した2026年度畜酪政策価格・関連対策論議でも大きな問題となった。農水省の畜産部会で日本乳業協会の佐藤雅俊会長(雪印メグミルク社長)は、酪農乳業界の当面の課題で脱粉過剰対策について「十分な基金積み立てを待たずに早期発動せざるを得ない状況となっている」と説明したうえで業界挙げた需給変動対策特別事業継続のために脱粉の飼料用販売に支援を求めた。
畜酪政策価格決定に際し自民党農林合同会議は14項目にわたる決議をした。冒頭、「数次の乳価引き上げの一方で、牛乳、脱粉の需要低迷が特に課題だ」と明記。具体的には14項目決議の5番目で、業界挙げた牛乳・乳製品の消費拡大とともに、在庫削減が必要な脱粉の需要拡大推進を国に求めた。
今年度設立したJミルク基金は、拠出を系統、非系統を問わず全酪農家、乳業メーカーに生乳キロ当たり15銭の拠出を求め、7年間で155億円の造成を計画。初年度は21億円となった。在庫対策は輸入品との代替などを実施するが国産と輸入品の価格差補てんには巨額の予算が必要となる。それが初年度からの発動となり、先の佐藤乳協会長の発言「事業継続のため」も、予算枯渇を懸念してのことだ。
■在庫対策でも脱粉7万トン超
中酪「交牧連」の需要拡大を呼び掛けるちらし
実際は業界と国が一体となり在庫調整を行うが、問題は今回の1万2000トン程度の削減対策では、全く生乳需給改善とはならないことだ。
Jミルクは25年度末の脱粉在庫を8万4400トンと見込み、今回の在庫対策12000トンを実施しても差し引き約7万2000トンもの在庫が残る。在庫は一般に5万トンを超えると多いと見られ、7万トン超えは明らかに過剰在庫が続くことになる
過剰解消には、今回の輸入代替が一番効果的だが財源が膨大となる。基本は需要拡大で需給正常化を進めることだ。カギを握るのは生乳需要の柱である飲用牛乳の消費拡大と脱粉在庫削減に結び付くヨーグルトの販売強化だ。同時に喫緊の課題として、小・中学校の冬期休暇に伴う学校給食牛乳の停止、不需要期の対応も必要となる。
こうした中で、業界挙げたさまざまな動きが出てきた。乳業メーカーをはじめ酪農団体でも活発な取り組みが始まった。各閣僚が「牛乳を飲もう」と訴えているのもその一環だ。中央酪農会議傘下の酪農の団体、地域交流牧場全国連絡会(交牧連)は25日、年末の29日から不需要期対策としてSNSで広く牛乳・乳製品の消費拡大を呼び掛けると発表した。
■"欠陥"畜安法にも起因
Jミルクの今回の在庫対策は、基金を自ら造成し対応した業界主体の取り組みとして画期的なものだ。だが、初年度で基金発動の事態となった。その要因の一つに、需給調整機能が弱体化した改正畜安法の課題を指摘する声も強い。
生乳流通自由化を促す改正畜安法下で、在庫削減リスクが指定団体傘下の酪農家に偏在化しているとの指摘だ。全参加型の需給変動リスク対応が今回のJミルク基金だが、非系統の自主流通グループ理解が深まったとは言い難い。
再生産可能で持続的な酪農経営を通じた基礎的食料である牛乳・乳製品は、政権挙げて取り組む食料安全保障の柱の一つだ。生乳安定供給には、現行制度の抜本見直しが欠かせない課題となっている。
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