農政:許すな命の格差 築こう協同社会
【特集:許すな命の格差 築こう協同社会】現地ルポ:JAみやぎ登米 地域ぐるみ園芸倍増へ 多様性持つ農協の役割 佐野和夫組合長インタビュー2021年7月7日
“持続可能な農業”にいち早く着目し、環境保全米に取り組む宮城県のJAみやぎ登米代表理事組合長の佐野和夫氏は「担い手の確立で継続できる産地づくりを目指す」と話す。これからのJA運営や課題をインタビューした。(聞き手・構成:客員編集委員 小林光浩)
佐野組合長
JAの経営課題 まず担い手確保
―― 佐野組合長が考えている一番のJA経営課題は何ですか。
私が考えなければならない当JAの経営課題は、農業の持続性を持たせるために担い手を確保することです。今、年間100組位の農家が辞めていく。地域では高齢化で疲弊しているので、JAが地域に入って地域の農業者を巻き込んだ担い手づくりをしなければなりません。
JAでは担い手支援センターや担い手の農業経営での相談・支援する農業金融センターを設置して、地域の農業を維持・発展させていきたいと考えています。
―― 目指すべき担い手の規模はどのくらいでしょうか。
稲作における担い手の目指すべき経営規模は、最終的には100ha程度でしょうが、取りあえずは農地を集約して50ha規模を考えています。水稲が6割位で残りを大豆などの転作作物とする水田土地利用型における複合経営体としての農業生産法人等を作っていくことにしています。令和2年度は農業生産法人などの意向が多い24の集落実行組合長への説明を実施しました。
ただ、コロナウイルス感染症の中、集落会議の開催ができなくなったことから、今年度から話し合いの機会を捉えて、集落での農業生産法人化など話すことにしています。スタートは、いきなり50haを目指すのは難しいと考えているので、20ha程度の農地集約を進める事を地域ごとし合いながら進めていきたい。
水稲・畜産・園芸 3本柱を確立へ
―― 地域農業振興で考えていることはありますか。
当JAでは、水稲・畜産・園芸の3本柱ですが、畜産は71億円を超えてある程度確立されていますが、問題は園芸の振興です。長年、園芸の目標を20億円の販売額を確保しようと取り組んできましたが、なかなか達成できません。やはり問題は、水田単作経営からの脱却ができないことにあります。
なんとしても水田単作から脱却していかなければならないと言うことで、若手を中心に園芸の拡大に取り組んでいます。宮城県としても園芸の倍増を目指していますが、当地区は湿地地帯が多いので水田の排水改善が必要です。今、水田の2ha規格への構造改善を進めていますが、その条件の中に園芸作物を栽培できるような基盤づくりを進めていかなければなりません。
そして、水稲プラス園芸作物による複合経営による農業所得の確保を目指さなければと思っています。今後の農業振興のビジョンをきちんと描いて行かなければならないと考えています。

―― 高齢農業者による地産地消の産地づくりが注目されていますが。
当JAでは直売所が小さく、地産地消の直接販売はやっていないと言うのが実態ですが、直売部会による取り組みも魅力を感じます。JAの集荷場の直ぐ側を三陸道の高速道路があって仙台へは直ぐに行ける環境にあるので、これからは高齢農業者による地産地消の園芸や若手による園芸作物の販売が伸びる環境が整っています。生協との連携も行っていますが、まだまだです。
―― 仙台などのスーパーなどを目指して、高齢農業者を中心とした直売部会を組織して、少量多品目栽培による地産地消の産地化づくりを進めて、同時に消費者サイズへのパッケージセンターを設置すれば、当地区の場合には組織力と経営基盤があるので、園芸の販売額も増加できるのではないでしょうか。園芸の産地づくりの今後に期待しています。
ボトムアップで若手の提案採用
―― さて、組合長が考えてる「良い農協」とは、どのようなものですか。
これまでは、ずっと農協はトップダウンで来ていましたが、それでは職員は育ちません。私が専務時代から言い続けているのは、ボトムアップ式の仕組みを作ろうとしている事です。そして、どんなことでもいいので積極的な職員の提案を求めてきました。
その結果、一例をあげればJAのミュージックソングもできました。若い職員11人で農協歌を作りました。この農協歌は毎日、各職場で流しています。ユーチューブでも流しています。そして、各部課長に対しては、「提案が上がってきたら絶対につぶすなよ」「職場の中で共有して実現させるように」と指示しています。これからは職員に金をかけながら提案する発想を導き出して、その提案を事業改革や職場改善に生かしていくことにしています。
―― この歌は非常におしゃれな歌ですね。
そうでしょう。このように職員が自主的に組合員のために良くしていこうと言う気持ちが生まれ、職員が自信を持って組合員のための行動ができるようになると「良い農協になる」と考えています。
職員によるイノベーションを高めるためには、職員一人一人の潜在能力を導き出して、職場の幹部たる者は職員の提案をしっかりと受け止めて進めて行くことが、組合員の満足度のアップにつながって行くと考えています。
食料の大切さコロナ禍で実感
―― では、私どもの今年の統一テーマである「許すな命の格差、築こう協同組合」について、組合長の思いを聞かせてください。
今回のコロナ禍で再認識したのは、「緊急事態になった時には、各国は自国の国民を守ることを優先する」と言うことです。日本は世界に名だたる先進国であると思っていましたが、「今回のコロナ禍では何と不便な国か」と言うことを改めて思い知らされました。
食料の自給率をしっかりと高めて行きながら、国民が憂うことが無いような国を作っていかなければならないと考えます。我が国の食料問題では、「子ども食堂」を作らなければならないような子どもの食の貧困問題もあります。食料を生産する立場にある農協は、先頭に立って食料自給率の向上に向けた活動をやっていかなければならないと改めて感じました。
―― 農協では生産者と消費者が組合員である事から、准組合員である消費者と共に食料を生産・確保していくシステムを構築する事が求められていると考えています。
そうですね。うちの方でも、食に関して准組合員の運営参加を進めて行く事にしています。
農業の大切さ国民にアピール
―― 最後に「どうしても全国に訴えたい事」がありましたらお願いいたします。
農業の多面的な役割や農協のライフラインを守る役割など、もっと強く国民に訴えるべきだと思っています。農業・農村が国土保全をしている事を国民に訴える全国的な運動を積極的に行うようにすべきです。農協は、常に国民に対して「農業・農村・農協が果たすべき役割」を強く訴え続けることが大事であると考えています。
―― そうですね。内向きの自己改革を進める事は協同組合としては当然のことであって、全国的な運動としては外に対して農業・農村・農協の役割について訴えることが重要ですね。本日は、お忙しいところありがとうございました。
【JAみやぎ登米の概要】
▽組合員数=1万5416人 (うち正組合員1万2681人)
▽貯金残高=1429億円
▽長期共済保有高=5281億円
▽販売品販売高=169億円 (うち米穀80億円、畜産71億円、園芸18億円)
▽購買品供給高=85億円
(2021年度末)
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