【全中教育部・オンラインJAアカデミー】高市内閣の最大の懸念は歴史認識問題 「自民党本流と保守本流」を講演 元経企庁長官・田中秀征氏2025年11月18日
JA全中は11月12日、元経済企画庁長官で福山大学客員教授の田中秀征氏を講師に、第4回オンラインJAアカデミーを開いた。テーマは「自民党本流と保守本流」。全国130カ所でオンライン視聴された。
元経企庁長官の田中秀征氏
田中氏は、1993年に武村正義氏と新党さきがけを結成して代表代行を務め、細川政権では総理大臣補佐、第1次橋本内閣で経済企画庁長官を務めた。
「戦争とは何だったのか」
冒頭、田中氏は高市内閣について「最大の懸念は歴史認識問題」と指摘。秋の靖国神社例大祭での参拝見送りを「習近平国家主席との会談の環境づくりとして適切」と評価したものの、「その後の中国側の反応を見ると日中関係は楽観できない」と述べた。
田中氏の歴史観は、終戦直後に過ごした長野の山村での体験に基づく。村には戦死者の遺骨が次々と戻り、その光景が「戦争とは何だったのか」という問いの原点になったという。のちに読んだ英国チャーチル元首相の回顧録に「必要のない戦争だった」「止めようと思えば止められた」との記述があり、「指導者が愚かで止める人もいなかった」と痛感したことが政治を志す契機になったと語った。
自由陣営の防波堤に
講演では、第二次世界大戦後の東アジア情勢が日本政治に与えた影響に触れた。終戦直後、アメリカは日本を「弱体化させる」方針だったが、中国での共産党勝利や朝鮮戦争により一転して日本を「自由陣営の防波堤」と位置付けた。これにより戦犯の公職追放が解除され、A級戦犯だった岸信介氏も政界に復帰した。
さらに社会党の統一を受け、1955年に自由党と民主党が合同して自民党が結成された。岸氏ら戦前の価値観を継承する流れを田中氏は「自民党本流」と呼ぶ。一方、田中角栄氏や宮澤喜一氏らは、戦争や植民地主義を「誤り」と認め、アジアとの協調を重視する「保守本流」を形成した。「自民党には戦争観の異なる二つの系譜が並存している」と指摘した。
歴史認識が問われる
東西冷戦終結後、歴史問題が国際社会で前面に出てきた。田中氏は当時、「侵略」「植民地支配」「反省・おわび」を日本が明確にすべきだと主張し、これが自民党離党の理由になったと振り返った。非自民の細川連立政権では、こうした歴史認識を踏まえて未来志向の日韓関係に踏み込んだと述べた。
その流れを国家的合意にまとめたのが自・社・さ政権による「村山談話」であり、「挙国的談話で『国の基本政策の誤り』を明確にした点が重要」と語った。小泉談話・安倍談話もこの枠組みを踏まえているとし、中国について「習近平主席は村山談話を最大限に評価している」と述べた。中国・韓国は歴史認識に極めて敏感であり、「高市氏は誤解されている」とも語った。
議員定数より政党助成金の削減を
質疑では「自民党本流と保守本流の行方」に関する質問が出た。田中氏は、保守本流の政治家が相次いで亡くなっていることに加え、両者の違いの象徴として「保守本流は沖縄に深い敬意を払い、足繁く通った」と紹介。「沖縄と政府が一体となって米国に要求する姿勢が大事」と述べた。
また、最近の国政については「若い世代で高市内閣の支持が高い。2世議員でないことも理由だろう」と分析。自民党と日本維新の会の連立については「議員定数削減は疑問。財政問題を言うなら政党助成金を減らせばいい。異論が出ないほうがおかしい」と述べた。
「隣国の隣国こそ友邦」 インド重視を訴え
最後に田中氏は、今後の国際情勢で重要な視点として、ドイツの政治家ビスマルクが語ったと伝わる「隣国の隣国こそ友邦」を引用し、「インドを最も重視すべき」と強調。人口構造と地政学上の重要性の高まりから、「『自由で開かれたインド太平洋』構想やQUAD(4カ国安全保障対話)を継続する。インドとの協力は中国との政治的安定にも寄与する」と締めくくった。
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