【全中教育部・オンラインJAアカデミー】「一円融合」で世界を見る 個性を基礎に「連帯の民主主義」を 大日本報徳社の鷲山社長が講演(1)2025年5月27日
JA全中は5月16日、東京のJAビルで2025年度の第1回目となる「オンラインJAアカデミー」を開いた。大日本報徳社の鷲山恭彦社長が「現代の歪みと報徳の教え」をテーマに講演し、会場参加40人、オンラインは100の会場で視聴された。
JA全中の若松仁嗣常務
冒頭、JA全中の教育部担当である若松仁嗣常務が「新自由主義の中で稼ぐ農業が突きつけられ、経営を強く押し出しているが、私どもは株式会社ではない。協同組合のスピリッツをもう一度確認し、地域を元気にすることが我々の最大の目的。(アカデミーを)自分の知識として培い、職場でも活用していただくことで、協同組合の輪を広げてほしい」と主催者を代表してあいさつした。
JA全中の田村政司教育部部長
JA全中の田村政司教育部部長は「世界では各地で戦争や紛争が起こり、地球環境や平和を巡る問題は他人事ではなく、自分たち自身の問題として突きつけられている。こうした問題がどうして起きるのか、克服していくことが求められている。報徳の教えを源流とする協同組合の役割を考えていく」と今回のアカデミーの趣旨を説明した。
「現代の歪みと報徳の教え」
大日本報徳社 鷲山恭彦社長
大日本報徳社 鷲山恭彦社長
報徳の考え方:「万象具徳」「以徳報徳」「積小為大」「一円融合」
二宮尊徳の考え方は「報徳思想」と言われ、尊徳は荒廃した農村を建て直した実践的な思想家と言われています。「報徳」の考え方は「万象具徳」であらゆるものに徳が備わり、徳に報いる「以徳報徳」が一番根本的な考え方です。基本にある自然信仰や八百万の神は一神教にはない発想で、価値観の多様性を前提にする、ある意味で極めて民主主義的な考え方です。また「積小為大」は量の蓄積が新しい質を生む、人間の能力は無限に発展できると深い信頼をおく哲学と言えます。
また「一円融合」は対立を捨て置かず、必ず円の中に入れて考える。すぐに一致点は見出せず10年かかる場合もある。しかし、円の中に入れて考えれば、敵対的になることはない。熟議を重ねて知恵を絞り一致点を見出す。これは次の発展の新しい基盤になり、日本や世界の問題を考える上でも大変重要になる観点です。ロシアとウクライナの戦争は、侵略したロシアが悪いと言われますが、「一円融合」から見ると、(冷戦後も残る)軍事同盟の持つ深刻な問題がある。「一円融合」を実践した人がドイツのメルケル元首相です。ロシアとの友好関係に一貫して意を尽くし、共通点を見出す努力を続けました。
私達が目指すべきは欧州連合のような東アジア共同体です。問題があっても敵地攻撃は絶対にいけない。「一円融合」で公平に物事を見る必要があります。農村に昔からある共同管理の「入会地」と同じように、(領有権を争う)島々を国際共有地、入会地にして資源配分を協議すれば済みます。台湾問題も安全保障条約でアメリカの先兵となって中国と戦うことになれば、安全保障ではなく、国民にとっては安全破壊条約になってしまう。世界を「一円融合」の観点から見ていくことが大切です。
農業と工業の「一円融合」
戦後80年の前半40年は農業も工業もバランスよく発展しました。1950年代には米の収穫量が最高になり、食料の心配もなくなった。農業構造改善も始まり、農業も工業も上り坂で発展した。その努力の結果として1968年に世界第2の経済大国になりました。ところが、1980年には農産物の輸入自由化が押し付けられ、アメリカの野菜や安い餌が大量に入ってきました。
「補助金は農家を甘やかす」「過保護だから競争力がなくなった」「競争で日本の農業は強くなる」といったキャンペーンも行われましたが、事態は全く逆で、欧米では農家を厚く手当しています。(農業と工業を)同じ土俵で考えるのは間違いで、工業立国で得たお金を農業に回すのは自然の理です。例えば、主要農産物は国家が高く買って消費者に安く売る。差額は国家が引き受けるという形もある。政府による農産物の買い上げや価格支援を廃止した先進国は少なく、アメリカの農家支援は非常に充実しているとも聞いています。生産者が自立できるように消費者も考える必要があります。農業と工業も「一円融合」していかないとうまくいきません。
科学的精神だから生命力がある
尊徳の思考は「天道と人道」「道徳と経済」「新田の開発と心田の開発」という二項対立の中で中庸を求めます。天道は自然の動き、人道は人間が自然の法則に従い、自分の利害を中に入れながら、米や麦を作る。人間の労働や努力による大切さ、働き掛けの大切さを言っています。「道徳と経済」は道徳のない経済は経済ではない。「新田の開発と心田の開発」は、心の開発の大切さで、今日も大きな問題だと思います。
「至誠・勤労・分度・推譲」は四大綱領とも言われます。「至誠」は人に対して誠を尽くす。「勤労」はよく働く。働くことによって自己変革、自分が成長していく。「分度」は自分の経済的能力的規模を心得て、分度を科学的に設定して働けば、必ず余剰が出る。余剰の3分の1は人のため、これが「推譲」です。
(尊徳の教えをわかりやすくまとめた)「報徳訓」では、絆や縁、富貴、勤労、循環も言われています。報徳の思想は勤勉に働いて、倹約して人に譲ろうです。富貴とは報徳運動で金持ちになると心も尊くなる。また、儒教は仁、キリスト教は愛、仏教は慈悲を説くとすると、報徳は「誠」です。天地自然の正確で休みない活動と万物生成の活動をきちんと認識することです。経を読み、天地自然の客観的真理を誠の心によって写し取る。これらは科学的精神だから生命力があるのです。
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