農薬の生態リスク 20年で9割減 低リスク農薬開発など成果 農研機構2022年9月13日
農研機構は9月12日、殺虫剤の水生生物へ悪影響を及ぼすリスクが20年間で92.4%減少したという研究結果を発表した。同機構は、農薬メーカーによる低リスク農薬の開発、農業者の水管理の徹底など農薬流出防止対策、国による農薬登録制度の見直しによると考えられる、としている。
水田に散布された農薬が排水によって河川に流出した場合、本来の標的ではない水生生物への悪影響(生態リスク)が懸念される。
一方、農薬の出荷量(有効成分換算)は1980年代をピークとしてその後は減少傾向にあるが、有効成分の種類は増加傾向にある。こうしたことから農研機構は複数の農薬の複合影響評価が重要になってきているとして、全国を対象に生態リスクがどう変化してきているかを「見える化」する手法を開発した。
その具体例として今回発表したのが、水稲用農薬67種類の生態リスクを全国の河川350地点で評価し、1990年から2010年まで5年ごとの推移をみた結果である。
研究では、複数の農薬によって影響を受ける可能性のある生物種の割合の算出した。
その結果、20年間で殺虫剤では23.6%から1.8%へと減少。減少率は92.4%となった。
除草剤では16.2%から7.6%へ減少。減少率は53.1%となった。
殺菌剤ではいずれの年、地点においても検出限界以下だった。
農研機構は、とくに殺虫剤で大幅に減少したのは「農薬メーカーによる低リスク農薬の開発と農業者の水管理の徹底など農薬流出防止対策の結果、有機リン系殺虫剤の水田での使用が大幅に減少したことが主要な要因」としている。
一方で殺虫剤では西日本で累積リスクの高い地点があるなど地域性もあり、今回の成果は地域性を考えた対策を立てることに役立つ。
全国を対象に生態リスクの変動を明らかにした今回の研究成果は世界でも類を見ないものだという。
農薬のリスクについてのリスクコミュニケーションにも活用できるほか、みどり戦略をはじめとする環境負荷低減の取り組みにも活用できる。
農研機構は、今後、2010年以降の推移を全国で2000以上ある環境基準点で検証するなど成果の発展をめざすとしている。
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