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シリーズ:防除学習帖

2019.07.26 
【防除学習帖】第12回 害虫の防除方法-耕種的防除と生物的防除-一覧へ

1.前回のおさらい
 農作物を加害する害虫のほとんどは昆虫。その生態を逆手にとって、害虫が生活しにくい、生きにくい環境を作ることが害虫防除の第一歩だ。各種防除法を効率的に組み合わせて総合的に防除を行うIPMが重要であり、防除法のうち物理的防除を紹介した。今回は耕種的防除の概要を紹介する。

2.耕種的防除

 植物である作物には、芽を出し、根や葉・茎を伸ばし、花を咲かせ、果実を実らせ、次世代の種をつくる。こうした作物の生育過程において、温度などの環境条件が害虫の活動可能範囲にあると、害虫は活発に活動し、作物を加害する。
 ということは、なんらかの栽培技術によって、害虫が活動できない環境条件をつくれば、作物も加害されることがない。作物の栽培手法によって、害虫の被害を防止することを耕種的防除と呼んでいる。
 以下、具体的な例を紹介する。

(1)栽培時期の移動
 作物の栽培時期を害虫の生態と合わないようにする手法。例えば、イネミズゾウムシは、成虫で越冬し、春温かくなって活動を開始すると、まずは越冬地周辺のイネ科雑草を摂食し、その後、田植えが始まると水田に侵入する。侵入のピーク時期は、5月中旬から下旬であることから、早期移植の品種で被害が大きくなり、中生や晩生など、移植時期が遅くなるほど被害が少ない。これを利用して、イネミズゾウムシの侵入時期を避けるように移植時期を移動することで、イネミズゾウムシの被害を軽減できる。

(2)輪作
 病害と同様、同じ作物(科)を栽培し続けるとその作物を好む害虫の密度が増し、収量や品質が大幅に低下して同じ作物を作付できなくなる。いわゆる連作障害だが、対策として用いられるのが輪作だ。前作で被害を及ぼした害虫の好みではない(加害することのない)前作とは異なる科の作物を植付け、餓死などによって害虫が死滅し、被害が起こらない程度まで密度を下げることを目的に行う。
 産地によっては、ブロックローテーションという、複数のほ場で科の異なる複数の作物を輪番で作付する方法もとられている。なお、害虫によって、輪作効果のある作物や輪作期間が異なるので、事前によく確認する必要がある。例えば、サツマイモの大敵ネコブセンチュウの場合、落花生との輪作を行うとセンチュウ密度が低下することが知られている。

(3)間作・混作
 輪作は、ほ場を他の作物に置き換えて栽培するが、間作は同じほ場で作と作の間の期間を別の作物(植物)を植えること。混作は同じほ場の畝間などに別の作物(植物)を植えることをいう。
 輪作と違うところは、同じ作物を同じほ場に作付しつづけることだ。このため、間作や混作で使える作物(植物)は、ほ場中の害虫密度を下げる何らかの作用を持っている必要がある。
 よく知られているマリーゴールドを例に取って説明する。サツマイモネコブセンチュウは、サツマイモを作付し続けることによって土壌中の密度が増し、年々被害が増える。そのようなほ場でマリーゴールドを間作や混作することでセンチュウの密度を下げることができる。なぜなら、マリーゴールドは、自身の根に殺線虫作用を持つ物質を持っており、侵入してきたセンチュウを殺すことができるからだ。このマリーゴールドを間作することで、土壌中の線虫密度を減らし、混作により線虫密度の増加を抑えられる。ただし、土壌中の線虫密度が多すぎると、効果が思うように出ない場合もあるため、殺線虫剤を使うなど、他の方法と組み合わせも検討するとよい。

(4)移植
 移植は、種を加害する害虫の防除に有効な方法だ。例として、タネバエという害虫を紹介する。
 タネバエは、ダイズをはじめとする豆類、ネギ類、ウリ類などの種子を食害する害虫。日本全土に分布し、基本的に蛹の姿で越冬するが、暖かい地方では幼虫や成虫でも越冬する。3月下旬~4月上旬頃に羽化が始まり、成虫が未熟堆肥や鶏糞、油かすなどの有機物の臭いのする畑を中心に集まり、土塊などに産卵する。
 この卵から生まれた幼虫が、播種後に水を吸ったダイズなどの種子に食入し、種子の中の胚乳を食い荒らしたり、発芽間もない幼茎や幼根に食い入って、発芽不良や生育不良を引き起こす。
 タネバの被害は、播種後間もない時期に被害が集中するため、種子を土壌に播種しなければ回避できる。つまり、本葉が出たしっかりした苗を移植すればタネバエの被害を回避できることになる。
 このように、移植は種子を中心に被害を及ぼす害虫に効果が大きい方法だが、育苗や移植の手間がかかるため、経済的、労力的にメリットのある作物を中心に利用されている。近年では、セル苗栽培、移植機の発達により畑作・野菜栽培でも移植が多く行われるようになっている。

 

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