農薬:防除学習帖
【防除学習帖】第21回 雑草防除の基礎知識<1>2019年10月4日
農作物を耕作する際に常に悩まされるのが雑草。この雑草を取り除くための作業“除草”には、農耕が始まって以来、農作業のかなり大きな時間を占め、1反あたり50時間を超えていた。現在では、優れた除草剤が開発され、除草に当てる時間は2時間以下となるなど、大幅な労力軽減が実現している。
優れた除草剤だが、誤った使い方をすると除草効果が出ないばかりか、作物に薬害を起こしてしまう恐れもある。除草剤の効果を最大限発揮するには、雑草の特性と除草剤の特性を把握した上で正しく使用する必要がある。今回から何回かに分けて雑草防除の基礎知識について学んでいきたい。
1.雑草とは
雑草は土壌のいたるところに生える植物で、農耕地に生える雑草を耕地雑草、畦畔や農道、街路など人間の生活圏に生える植物を人里植物といい、雑草とは耕地雑草に人里植物を加えたものとされている。本防除学習帖では、主に耕地雑草を対象とした防除を取り上げていくため、以下の記述では、耕地雑草を雑草として扱う。
雑草とは、農耕地に農作物と同様に生えてくる草本の植物で、肥料分の収奪、光の競合、水の競合、生育場所の競合などによって農作物の生育に影響を与え、農作物の収量・品質を低下させることによって経済的被害を引き起こすもの。
平たく言えば、「農作物の正常な生育を邪魔する植物で、取り除かないと農作物の収量・品質が低下してしまう厄介なやつ」ということになる。
2.雑草の種類
雑草は、生育する環境によって、水田雑草と畑地雑草、および田畑共通の雑草とに大きく分けられている。作物と雑草の研究者、笠原安夫博士が著した「山野草・人里植物・帰化植物・作物と雑草の生育地と日本での種類(笠原:1971)」によると、水田雑草が43科191種、畑地雑草が53科302種、田畑共通のものが18科76種とされ、農地に生える雑草は約450種とされている。
雑草には、イネ科、カヤツリグサ科、キク科、タデ科に属するものが多い。また、次世代の発生器官として種子だけを残すものを一年生、種子以外の地下茎や根を発生源として残すものを多年生雑草という。
さらに、形態の違いと除草剤の効果の違いから、イネのように細長い形をした葉を持ち、葉脈が平行になっているものをイネ科雑草といい、イネ科以外で葉の形が広い雑草で、葉脈が網目状になっているものを広葉雑草という。これに加え、水田雑草では、カヤツリグサ科雑草を加えて区別していることが多い。
上記のような区分で主な雑草を表のように分類した。
3.雑草の生理
雑草防除をどの時期に、どんな方法で行うのが効果的なのかを知るためには、雑草のライフサイクルを知る必要がある。例えば、どんな植物でもそうであるが、発芽したての幼植物はか弱く、除草剤の影響も受けやすいので、発芽時期に合わせて除草剤が処理されていれば、高い効果が期待できるといった具合である。
(1)休眠
植物は一般に発芽する前に休眠する性質を持っている。休眠とは、発芽に好適な環境となっても発芽せずにじっとしている状態のことで、例えば、種が出来て地面に落ちたばかりのとき、発芽に必要な胚が未成熟だったりすると、発芽しても正常な生育ができないため、自衛手段として休眠して発芽せず、胚の充実を待つといった具合である。
休眠があると、種からの発芽が揃わず、発芽に好適な期間が続く間にだらだらと雑草が発芽し続けることになる。つまり、除草剤を処理し、効果が持続している期間の雑草は防除できるが、効果の持続期間が切れた後に発生してきた雑草は防除できないことになる。いわゆる、取りこぼしという現象が起こるため、そのような場合には再び除草手段を講じる必要が出てくる。
これが、一斉に出てくる雑草は防除しやすいが、発生が不斉一な雑草は防除しにくい所以の一つである。
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