世界初 有機薄膜太陽電池を活用したブドウ栽培 実証試験を公開 山梨県2025年9月1日
山梨県は8月27日、7月に開始した世界初の「有機薄膜太陽電池をブドウ棚で活用した、県オリジナル品種『サンシャインレッド』の着色を向上させる実証実験」の現地説明会を開催。有機薄膜太陽電池のブドウ畑での活用や発電の仕組みを、共同研究者で公立諏訪東京理科大学渡邊康之教授とともに説明した。また、有機薄膜太陽電池を活用して着色向上したブドウ「サンシャインレッド」の試食も行われた。
有機薄膜太陽電池を活用し「サンシャインレッド」を栽培するブドウ棚
実証実験は、ブドウ園の簡易雨よけに有機薄膜太陽電池を設置。有機薄膜太陽電池によって発電した電力を活って山梨県が開発した赤ブドウのオリジナル品種「サンシャインレッド」の着色向上を図る世界初の実証実験として、7月22日に始まった。
ブドウの雨よけに設置している有機薄膜太陽電池は、光を通す素材でできているため、太陽の光もブドウに降り注ぎ、さらにブドウの着色はこれまで樹の下に白色のマルチを敷き、果房に光を反射させていた。同実証実験では、ブドウの着色を向上するため、有機薄膜太陽電池により昼間に発電した電力をバッテリーに蓄電し、夜間にLEDライトの光をブドウに照射。透過した太陽光と、有機薄膜太陽電池によって得られた電力を使った夜間のLEDライト照射の両方によりブドウの着色が向上した。
ブドウの着色比較
従来の太陽光電池は、光を通さない素材で、柔軟性に乏しい(折れ曲がらない)ため、農地での使用が難かしかった。一方、有機薄膜太陽電池は光を透過させ、農作物の育成と太陽光発電を同時に行うことができるため、ブドウ園のほかビニールハウスなど農地での活用が期待される。
現地説明会には、山梨県の長崎幸太郎知事や公立諏訪東京理科大学の渡邊教授など関係者約30人が参加。冒頭、山梨県農政部の樋田洋樹部長が事業概要を説明。また、山梨県果樹試験場の石原雅広場長が栽培試験内容について説明した。ほ場の視察では、LED照射区と非照射区の比較が行われ、参加者が照射区のブドウ着色状況について確認した。
「発電」と「農業栽培」の両立を目的として「サンシャインレッド」を栽培するという今回の実証について、渡邊教授は「果樹での実証は初の試みであり、少し心配もあったが今日の様子を見る限り、うまくいったようで安心している。有機薄膜太陽電池は農業分野で非常に期待が高い技術で、山梨県とタッグを組んで、取り組んでいきたい」とコメント。また、長崎知事は「原油価格の高騰など、さまざまな状況においても農家経営にとってプラスとなり、安定的な経営につながるよう、一つひとつ着実に取り組みを進めていきたい」と話した。
同実証は、令和9年まで実証実験を続け、実用化につなげる予定。山梨県では、今回の実証実験に加え、水素を活用した農業用ハウスでの加温試験の実証にも取り組んでおり、今後はこれらの取り組みを通じて、カーボンフリー農業の先進県として脱炭素社会への貢献モデルの構築を目指す。
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