バイオスティミュラント 高温障害対策や乾田直播に活用 自主ルール策定や効果検証進む2025年12月15日
新たな生産資材としてのバイオスティミュラント(BS)への注目が、農作業現場でも高まっている。農水省が5月にガイドライン(GL)を策定し、これを踏まえて、AGRI SMILE(東京、中道貴也代表取締役)がJAなどと設立したEco-Lab(バイオスティミュラント活用による脱炭素地域づくり協議会)が「自主規格」を策定し、全国のJAと連携した大規模実証の結果を公表した。日本バイオスティミュラント協議会(JBSA)も資材業界の「自主基準」を公表し、講演会などを通じて活動を活発化させている。実証とルール整備の両輪で、市場形成は新たな段階に入りつつある。
JBSA自主基準から「主たる効果・効能リスト」
BS資材は、作物や土壌が本来持つ機能を補助し、養分吸収効率の向上や非生物的ストレス耐性の改善を通じて、収量や品質の安定化を図る資材として、世界的に注目されてきた。欧米では2010年代以降、定義や制度整備が進み、肥料や農薬とは異なるカテゴリーとして位置付けられ、環境負荷低減や精密農業と組み合わせた活用が広がっている。
日本でBS資材への関心が高まっている背景には、いくつかの要因がある。一つは、近年の気候変動に伴う高温や乾燥などへの対応が、営農現場で喫緊の課題となっていることだ。猛暑による高温障害や水不足は、作物の生育や品質に直接影響を及ぼしており、従来の施肥・防除体系だけでは対応が難しい場面も増えている。こうしたなかで、作物のストレス耐性を高め、生育の安定化を図る技術として期待が高まっている。BS導入を決め、実証を行っているJA全農も「高温ストレスなど気象変動に起因する作物の収量や品質の低下がなければ、注目されなかったかもしれない」と指摘する。
二つ目は、バイオスティミュラントが「みどりの食料システム戦略」に位置付けられたこと。同戦略では、環境負荷低減と生産性向上の両立を目指す技術の一つとしてBSが示され、化学肥料や農薬への依存を抑えながら生産性を確保する手段として、政策的にも注目されている。
三つ目として、「乾田直播」の拡大が挙げられる。省力化や作期分散の観点から導入が進む乾田直播では、初期生育の安定や根張りの確保が重要な課題となる。根圏環境の改善や養分吸収の効率化を通じて初期生育を支えるBS資材は、こうした新たな栽培技術との親和性が高く、今後の活用が期待されている。
業界の自主的ルール策定と実証が進む
こうした流れの中で、Eco-Labは自主規格に基づき、全国のJAと連携した大規模な実証を実施した。実証には全国106JA、69品目、延べ約1500haのほ場で行われ、経済性評価が完了した約200ほ場のうち、80%のほ場で費用対効果が確認されたとしている。水稲や園芸作物など幅広い品目で、生育のばらつき抑制や品質改善が見られ、防除回数や農薬使用量の低減につながった事例もあった。
農薬や肥料などのメーカーを中心に組織する日本バイオスティミュラント協議会が9月に公表した「自主基準」は、効果・効能の表記、効果検証の考え方、安全性情報の提供という三つの指標を柱に、製造者や輸入者が責任ある情報提供を行うための手引きとして位置付けられている。
この自主基準は、一定の基準を満たした製品を認証する制度ではなく、根拠データの整備と説明責任の重要性を明確にした点が特徴だ。JBSAの正会員は36社で大きな増減はないものの、関連分野の法人賛助会員は3月時点の120社から、現在は131社(12月11日現在)に増加。講演会などを通じ、業界横断的な議論の場を広げている。
AGRI SMILEの検証の主な成果
JBSAは今後、自主基準の浸透による「健全な市場形成」を目指す。農業現場の信頼を高めるため、「どんな製品があるのか」「どんな効果があるのか」といった現場の声に応えるため、Q&A形式による各種質問への考え方や、自主基準に基づく表記を行っている製品を協議会のホームページで紹介することも検討している。2026年春には、世界的なBSの潮流や日本の技術の海外展開をテーマにした講演会も計画し、協議会としての存在感を高めたい考えだ。
農水省はGLを通じて、業界の自主的なルール作りや運用を促しており、実際の責任は資材の供給側に委ねている。そのため今後の課題は、供給側が実証結果を積み重ね、適切な表示や利用方法を営農現場に丁寧に示していくことだ。これにより、効果や特性が裏付けられた資材が市場に定着していくことが期待される。
効果が検証できれば、日本発のBS技術の海外展開も期待できる。アクプランタ(東京)はBS資材「スキーポン」で国内に加え、海外でも実証を重ね、高温や乾燥条件下でも生育の安定や品質向上につながる一定の効果が確認している。米国での実証のほか、ウガンダなどアフリカ諸国での展開も進めており、こうした事例が今後の海外での普及の参考になる。
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