奪われる日本の森-外資が水資源を狙っている

- 著者
- 平野秀樹(東京財団研究員)、安田喜憲(国際日本文化研究センター教授)
- 発行所
- 新潮社
- 発行日
- 2010年3月20日
- 定価
- 1400円+税
- 評者
- 太田猛彦 / 東京大学名誉教授
『奪われる日本の森』では、欧米文明の破壊性と縄文文明及び稲作漁撈文明の持続性を対比させ、近年のグローバル市場原理主義の台頭を明治維新、第二次大戦後に続く第3の「ニッポンの漂流」すなわち日本の危機と捉え、この危機を回避するためには、森里海の水の循環を守り、日本の歴史と伝統文化を学び、その上に立って「森の環境国家」を構築すべきと結んでいる。
日本人にとっての森を考える
共に畑作牧畜民族と稲作漁撈民族の性格の違いやキリスト教文明・地下資源文明・市場経済原理のバックグラウンド等への理解を深めるのに極めて有効である。しかしながら、日本にもかつて荒廃した森や疲弊した里山が存在したし、それでも森が国土の5割程度残っていたのは急峻な地形や温暖多雨な気候といった自然条件に負うところが多いので、美と慈悲のみで説明するのには多少の違和感を覚える。
また平野秀樹氏は、外資による森や水、その他の不動産の買収の現状や日本の土地制度の問題点について詳細に報告している。氏の告発が一つのきっかけになって、各地で水源地売買の事前届出の条例ができ、国レベルでも全ての山林にかかる権利移動(売買、相続、贈与を含む)の届出が必要となった。
平野氏らはその後、個人の土地所有権がきわめて強く、農地以外には売買規制もないという日本の土地制度の特異性を重視するとともに、不動産登記や地籍調査など国土の所有・利用に関する諸制度が旧態依然であるため、行政は土地所有者情報を把握しきれず、安全保障面を含め、公共用地買収、土地の集約化、徴税などで行政コストの増加や政策展開の困難をまねくとして、国土資源(土地・水・森林)保全のための土地制度の改革を訴えている。
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