日本一の直売所が実践している「食える農業」の秘密

- 著者
- 長谷川久夫
- 発行所
- ぱる出版
- 発行日
- 2013年3月15日
- 定価
- 1400円+税
- 電話
- 03-3353-2835
- 評者
- 小林綏枝 / 元秋田大学教授
「カンブリア宮殿」にも取り上げられたほどの人の言は自信にあふれ気概に満ちている。いわく「みずほの野菜はスーパーより2、3割高い」「出荷農家は自分で値段をつける」「出荷農家は30万円の権利金を支払う。みずほという舞台を使う権利金だ」等々。
痛快、輸入品は売らない
著者は1990年に直売所を立ち上げて1年目で1億円、6年目にして3億円、今では年間売り上げは7億円。1農家当たりの売り上げ800万円はおそらく日本一だろうと誇る。著者が社長を務める直売所「みずほの村市場」はバナナを置かない。国産品は売るが輸入品は売らない。カット野菜を置かない。生産者や販売側も消費者を選ぶ。消費者は正しい情報を伝えれば正しい行動をしてくれる等々、読み手の心も揺さぶられる。何が彼をしてこのような信念に導いたのか。
1948年生まれの著者はかつての多くの農村青年と共通する経験を持つ。高校を出て実家の農業を手伝い、出稼ぎを経験し、経営規模拡大に努め、造園会社経営にも手を染めた。農業生産法人を作る夢は果たせなかった。4Hクラブや青年団活動も経験した。青年の主張にも出た。市議会議員にもなった。その間考え続けたのは「何故農家が値段を付けられないのか」「農業で食えないのか」だった。彼はこの課題をまっすぐに追求し続けた。しかし世の論者の多くはその要因を資本主義の矛盾や農政問題、日本農業の構造問題、流通機構の問題等としてしまい、論議はするが著者のように一途に具体的解決方法を追求する道はとって来なかった。著者は「自分で値段を付ける」「農業で食う」を本気で追求し成功した。ここが彼のユニークさであり魅力なのだ。世の農家や直売所を原価計算をしない、作付け計画が無い、安売り競争に未来は無いと批判しつつ原発事故、TPP等に苦しみながらも産業としての農業の発展を展望し、消費者との連携を求めて進み続けている。反論もあろうが痛快な本だ。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日