原発に依存しない地域づくりへの展望 柏崎市の地域経済と自治体財政
- 著者
- 岡田知弘(京都大学大学院経済学研究科教授)、川瀬光義(京都府立大学公共政策学部教授)、にいがた自治体研究所 編
- 発行所
- 自治体研究社
- 発行日
- 2013年4月15日
- 定価
- 1500円+税
- 電話
- 03-3235-5941
- 評者
- 菅野孝志 / JA新ふくしま代表理事組合長
本書を手にした時、ある話を思い出した。「原発立地JA管内の米価格は2000円ほど上乗せになっている。農業振興には、町財源から多くの機械設備等が準備され農家の負担は軽減されている...」。
地域資源活かし真の自立を
補助金や交付金の使途に裁量があることを私は評価するが、立地市町村のしたたかな地域再生と自立への道をも原発に委ねてしまったことに苛立ちを感じる。今その管内の住民は、県内外に避難、何時帰れるかと不安に慄き、コミニュケーションや暮しが分断され続けている。
原発の立地は、地域産業に乏しく過疎化が著しい陸の孤島と称された地域、たとえば福島では阿武隈山系すそ野の太平洋沿岸は、何もないところでチベットとまで言われ、だから誘致に積極的に動いてきたと語る。時の通産大臣が「住民の皆さんは、かなりの迷惑を受けておるところであります。…そこで皆様方にある程度福祉を還元しなければバランスがとれない」として電源三法を整備してゆく。 バランスとは危険と死を併存させたもの。原発立地で地域経済が活性化し人口も増えると期待したが、持続的に構築できるものではなかったことを経済指標分析が示している。が、マスコミの情報操作と恣意的論調の横行は、福島の事故をも顧みるものではない。
福島第一原発の事故により、原発は科学の最高峰との神話は崩れ、「地域の死、人の死、将来の死を」ばら撒き続けるものと化した。地域資源の活用を通じ地域再生を探る人の力、過去と現在の地域力を見極める民の力が萌芽しつつあり大きなうねりにしなければならない。地域再生の機能は、公契約による地域優先を目指すべきものである。原発、基地問題(=渦中にあるTPP参加問題)等、過去・今・未来への責任と日本国の真の自立のため、地域資源を活かすために立ち上がらねばと本書は語りかけている。
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