『北の大地に挑む農業教育の軌跡』
- 著者
- (公財)北農会農業技術コンサルタントチーム内「北海道における農業教育の軌跡」編集委員会編集
- 発行所
- 北海道協同組合通信社
- 定価
- 本体2857円+税
- 電話
- 011-231-5261
- 評者
- 梶井功 / 東京農工大名誉教授
本書は、その題名通り"多雪・寒冷など気象条件に恵まれず、稲作を中心とした日本古来の農業技術では対応できず、欧米農業を模範にしながら...新しい寒冷地の農業を確立しなければならなかった"北海道で、"北海道農業や農村社会、農業教育に及ぼした教育及び教育論を取り上げた"労作である。
新たな農業創出へ
農民つくった記録
第1編北海道農業教育史の概要、第2編北海道農業教育の系譜別のあゆみ、第3編各教育・研修機関の創設者・指導者の苦闘の記録、第4編関連付表、の4編で構成されているが、中心は第2編であり、第1章学校教育と施設教育、第2章農業研修事業(施設教育・生涯学習教育)、第3章農学研究と普及・指導事業の推移、第4章近年の農業教育者・農業担い手の育成の取組、の4章が納められている。
報徳教育活動やデンマークの農業教育が北海道農業に大きな影響を与えてきたことを、私は本書で初めて知った。また、第3編に納められている“創設者・指導者の苦闘の記録”には教えられるところが多い。黒沢酉蔵の一文を紹介しておこう。
“私はあえて申し上げておきましょう。日本は農学あっても農民教育はない、と。農民に寄生するものを育てる教育はあっても、農民をつくり上げる教育というものはないといってよいでしょう。この日本の旧弊を打破するために農民自らがデンマークを範にして自らの努力で守り育ててきたのが酪農学園だと言えるのです”。
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