【読書の楽しみ】第22回2018年1月21日
◎森功
『悪だくみ』
(文藝春秋、1728円)
年明け国会審議では予算編成に集中したいというのが与党の思惑でしょうが、そうはさせじと野党が予算委員会でどこまでモリカケ問題を追及できるのかが注目されます。
「悪だくみ」という書名は安倍夫人が、夫や加計孝太郎氏らがパーティで盛り上がっている写真を自らのフェースブックに「男たちの悪巧み」というタイトルでアピールしたことが(意図とは別ですが)ぴったりだったので借用したのでしょう。
加計学園の獣医学部新設は、首相と加計氏など仲間うちの永年の計画であり、「国家戦略特区の獣医学部新設は加計ありきだったかどうか」などと疑うマスコミはピント外れだと著者は言います。がっちり路線は敷かれていたのであると。
確かに首相と加計氏の留学から数十年にわたる超々親密な付き合い、事件のキーマンである下村博文文科相(当時)と荻生田光一官房副長官(同)の加計への異常な肩入れ、安倍・加計・下村三夫人の驚くべき密着ぶり、など本書が提示していく一つひとつのファクトがそのことを雄弁に物語っています。
フリーのジャーナリストがここまで掘り起こせることがなぜ新聞テレビにはできないのか。あえて報道しないのか。「事実は報道よりも奇なり」です。
◎井上寿一
『戦争調査会』
(講談社現代新書、950円)
敗戦のショック覚めやらぬ昭和20年11月、幣原内閣は戦争調査会という国家プロジェクトを立ち上げました。幣原首相は「なぜ日本は戦争に突入したのか」「なぜずるずると戦争が続いたのか」「なぜ戦争に負けたのか」を日本人自らの手で探ろうとしたのです。
政治家、軍人、学者、ジャーナリストなどたくさんの人たちが出席を求められ、証言をしていきます。幣原の思惑は、事実をきちんと後世に残し、日本が二度と戦争への道を歩まないようにという点にありました。
最近まとめられたこの調査会資料を著者は徹底的に読み込んで、簡にして要を得た書物にまとめました。歴史に学ばずして戦争への道を回避することはできません。本書から、戦争を避けることはできた、あんなムダな戦(つまりムダな犠牲)はなくてすんだ、もっと早く戦争をやめることはできた、ということが伝わってきます。
政治家、軍人、マスコミ、世論、何が問題だったか、現代にも生きる課題がそこにはあると感じました。
◎ドリヤス工場
『必修すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む。』
(リイド社、1998円)
最初にお断りしますが、これはマンガです。マンガは絶対読まないという方、傑作を要約マンガにするなんてと憤慨される方にはお詫びをしておきます。
とはいえ、読んだ本、これから読むかもしれない本、絶対に読まないだろう本、を手軽にさっと流し読みできるのはとても便利です。
芥川龍之介の「トロッコ」、菊池寛の「父帰る」、ツルゲーネフの「初恋」、魯迅の「狂人日記」、森鴎外の「山椒大夫」など25編。中には石原莞爾の「最終戦争論」やマルクス/エンゲルスの「共産党宣言」まであります。
これがもとで読んでみようという気になればマンガの力も捨てたものでないということになります。本書はシリーズ3冊目、どれも人気は高いとか。水木しげるばりの迫力ある画風です。
短編マンガだけで原書を読んだ気になっては原著者に失礼でしょうが、マンガという名の読書を楽しむという余裕があってもいいのではないでしょうか。
(読書の楽しみの最近の紹介書籍)
・第21回 『戦争と農業』、『侵略する豚』ほか(17.12.13)
・第20回 『怖い中国食品、不気味なアメリカ食品』ほか(17.11.16)
・第19回 『知ってはいけない隠された日本支配の構図』ほか(17.10.10)
・第18回 『日米開戦へのスパイ』、『ナチスの「手口」と緊急事態条項』ほか(17.09.24)
・第17回 『脱 大日本主義』、『日本中枢の狂謀』ほか(17.08.12)
・第16回 『国権と島と涙』、『富山市議はなぜ14人も辞めたのか』ほか(17.07.16)
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