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コラム:正義派の農政論

【森島 賢】

2018.02.19 
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 野菜の価格が高騰し、歴史的な高値に張り付いている。
 農水省は、高値の原因は、昨年秋以降の長雨、台風、低温だという。だから、2月後半になれば、にんじんとはくさいを除き、主要な野菜は平年の価格に戻るという。
 天候不順という生産条件、つまり、供給側に原因があるというのだが、そうだろうか。需要側に原因はないか。そして、供給側は、天候不順だけに原因があるのか。供給側と需要側が、ともに高値に対応できない、という経済条件に原因があるのではないか。
 供給側も需要側も、価格に対して敏感に対応できないこと、つまり、価格に対する硬直性に原因があるのではないか。

東京都中央卸売市場のキャベツ価格と取扱量(正義派の農政論)

 上の図は、主要野菜のうちキャベツを取り上げて、東京市場での価格と取扱量を、過去15年間みたものである。
 昨年12月以後の価格は、まさに記録的な高値になっている。この15年間でみられなかった高値である。2月上旬は昨年10月の4倍の価格に高騰している。高騰しているだけでなく、荒い値動きがある。原因は何か。

 需要側の原因をみてみよう。家庭内で使う野菜は、価格が高いときは節約できる。しかし、ファミレスなどの業務用のばあい、価格が高いからといって、野菜を使わないわけにはいかない。使う量を減らすわけにもいかない。そんなことをしたら客が逃げてしまう。だから、供給量が少なくなれば、業者の取り合いになって、どんなに高くても買うことになる。
 このように、業務用野菜のばあい、家庭での野菜消費と違って、価格が高くても、一定の量は仕入れることになる。また、価格が安くなったからといって、仕入れ量を増やすこともない。需要量が価格に反応しない。つまり、業務用の需要は、需要量が価格に対する弾力性を失って、硬直的になる。そうした業務用の野菜が、外食が増えるにつれて増えている。
 本来、市場には、価格が乱高下しても、需給がそれに対応して、乱高下を是正する機能がある。それが市場の需給調整機能という優れた機能である。しかし、いまの市場は、その機能を充分に果たしていない。

 つぎに、供給側つまり、生産側をみてみよう。価格が高くなれば、供給量を増やして価格を下げるという需給調整機能が、本来、市場にある。しかし、いまの市場は、その機能を失っている。つまり、価格が乱高下しても、供給量を調整することがない。つまり、供給量が価格に反応しないで、弾力性を失い、硬直的になっている。
 このように、需要側からみても、供給側からみても、市場の需給調整機能が機能不全に陥っている。
 昨年秋以後の野菜価格の高騰の原因を天候不順としかみない見方は、こうした市場の変質をみていない。だから、今後も天気まかせの対応しかできなくなる。そうして、価格の乱高下がつづくことを放置する。それが、いまの野菜政策である。

 ここでは、供給側をやや詳しくみてみよう。供給側には、大規模野菜専作農家による供給の硬直化がある。
 以前は、小規模兼業農家や、小規模複合経営農家による供給が、圧倒的に多かった。野菜販売による収入は、家計全体の収入の一部に過ぎなかった。だから、価格という外力に対して供給量を伸び縮みさせる余地があった。つまり、弾力性があった。
 しかし、いまは大規模野菜専作農家が多くなって、野菜販売による収入が家計収入の全てなので、価格が下がったからといって、出荷量を減らすわけにはいかない。また、価格が上がったからといって出荷量を増やすこともできない。ふだんから全力投入で生産しているからである。

 ここで問題にしたいのは、大規模野菜専作化という政策の再検討である。たとえば、高齢者の小規模野菜生産への参入である。小規模生産だから弾力性がある。その上、高齢者には若いときに鍛えた高い栽培技術がある。
 野菜政策の再検討をしないままで、このまま放置しておけば、韓国や中国からの、大量の野菜輸入は必至である。世界地図をみるまでもなく、輸送距離はそれほど長くない。その結果、国内の野菜生産は衰えるばかりになる。

 最後ではあるが、言っておかねばならぬ。
 こんどの野菜価格の高騰を、手放しで喜んでいる野菜農家は、それほど多くはない。多くの野菜農家は、これまでの赤字の一部を埋めただけである。
 また、多くの野菜農家は、こんどの天候不順で価格が高くなっても、天候被害にあって売るべき野菜がない。野菜価格の高騰で困っているのは、消費者ばかりではない。被害農家こそが困っているのである。
(2018.02.19)

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