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【近藤康男・TPPから見える風景】日米貿易交渉に見る戦略欠如とご都合主義2019年5月9日

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【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

 4月23日、超党派の幅広いネットワ―クである「TPPプラスを許さない!全国共同行動」の主催で、政府の所管官庁の参加を求めて日米FTA交渉をただす」第12回院内集会が行われた。5つの省庁から16名の出席があったが、TPP以来12回の質疑を交わす中で政府側出席者の真摯さと回答の内容が、回を重ねるたびに劣化してきたことを改めて痛感した。

 政治の劣化や戦略欠如から生まれるご都合主義は官僚の"忖度"を生んだが、その"忖度"が、官僚にも戦略や長期的視点とは無縁のその場しのぎのご都合主義を促したとしか思えない。院内集会での官僚の対応も、今般の日米協議における共同声明や4月の首脳会談・閣僚協議に見られる政治の劣化の結果の現れでもあると言えよう。

 

◆市民側からの事前質問

 「全国共同行動」からは事前に、交渉目的・情報開示関連の質問2項、日米共同声明5項、米国の「対日交渉目的」のTPP越え7項目、農産物関連4項、食の安全関連5項、医療・医薬品関連3項の合計26項目を文書で送付、当日会場から3点の質問が出された。冒頭で"回答内容の劣化"に言及したが、質問項目が多いのは、"回答内容の劣化"により回を追うごとに質問が増えざるを得なかったことによるものだ。
 このコラムでは、総括的質問として、交渉目的・情報開示と日米共同声明との関連の質問に限定して報告をしたい。

 

◆事前の文書質問に対し、従来以上に的外れの口頭での回答

 7項目の質問は、
(1)交渉に際しての「対米交渉目的」
(2)国会・市民に対する情報開示のあり方
(3)"農産品は過去の経済連携合意が限度"というのは非関税障壁も含むのか
(4)非農業分野以外の交渉範囲は無制限なのか
(5)日米共同声明第3項で言う"所要の国内調整を経て交渉を開始"と言う場合の"所要の国内調整"とは閣議や国会を指すのか
(6)日米共同声明第4項で言う"物品・サ―ビスの議論完了後に貿易・投資も交渉する"と言う場合、合意は別々なのか一括なのか
(7)米国が共同声明を超える要求を出した場合はEUのように交渉離脱の腹はあるのか、
といった内容だ。
 これに対しての回答は、概要、
(1)交渉目的については、「交渉は日米の互恵的物品貿易を協定を目指すもの」
(2)情報開示は交渉中ゆえ慎重に対応するが可能な範囲で努める
(3)農林水産品の交渉の範囲についても、共同声明に基づく物品貿易で第1回閣僚協議で議論された範囲
(4)の非農業分野については回答なし
(5)の"所要の国内調整"は米国のTPA法によるもの(で日本のことではない)
(6)の物品貿易以外の合意の時期は、物品貿易合意と同じタイミングのものだけ(デジタル貿易)、ただそれ以外の分野については予断を差し控える
(7)EUのような立場を取るかどうかなど、仮定の問題には答えられない、というものだった。
 では、官僚の回答は国会答弁、日米首脳共同声明、茂木担当相、米国の「対日交渉目的」に沿ったものだったか?
 字数の制約で当日の回答を詳細に紹介できなかったが、一言で言えば、官僚の回答は、国会答弁も、共同声明も、茂木担当相の会見内容とも矛盾し、謂わば"塹壕の中に逃げ込んだ"ようなものでしかない。"忖度"を超える、その場主義でしかない。

 

◆日本側に交渉の目的はあるのか?

 米国は法に基づいて詳細な「交渉目的」を議会・公聴会意見を踏まえて作成・公表しており、EUも米国の「交渉目的」公表の1週間後"交渉指令"ともいえる公的文書4点を加盟国に提起し自らの立ち位置をEU条約に即して明確にしている。これまでの閣僚・官僚の答弁・回答から伺えるのは戦略・包括的「交渉目的」も無いまま、敢えて言えば「農産品のTPP水準での合意」と「為替条項を財務相同士で協議する」という2点だけが交渉目的だと言っているに等しい。米国はTPPと同じ分野を22項目で掲げ、TPP以上の内容を要求して攻めて来ているのだ。

 

◆国会・市民への情報開示は?

 情報開示についても、茂木氏の3月4日参院予算委員会での「日本も米国も、交渉途中の段階で同じような形、レベルで国民に説明していく」という答弁と比べれば、官僚の回答は日光の三猿にも等しい。

 

◆交渉対象の分野はどうなっている?

 共同声明でも、TAG物品協定というお題目にも関わらず、上述したように第3項と第4項で、米国の交渉目的同様、交渉範囲は青天井と示唆している。
 茂木氏の日米閣僚協議後の会見での説明は「ステップを踏めば4項の貿易・投資の交渉も排除はしないが、協定という表現は取っていない」と苦しい誤魔化しにも聞こえる。その一方では、記者から「農産品・自動車の議論開始、デジタル貿易も適切な時期に議論、というのが米国との今回の閣僚協議での(交渉)範囲の特定か」と問われると、「(範囲特定)というよりは議論の順番を協議した」と訳の分からない説明をしている。

 

◆日米の合意の手順は物品だけ、その他だけ、と別箇なのか?

 官僚の答弁はともかく、自民党の決議でもそうだが、茂木氏は上記の米国との4月15~16日協議後会見で明確に、「貿易協定は個別事項の合意でなくパッケ―ジでの合意だ、そして記者の「パッケ―ジは自動車と農業か?」との突っ込みが続くと、「(交渉分野)全体でのパッケ―ジだ」としている。

 そして安倍首相は、参院選前は困るが、大統領選にはいい返事を準備する、とトランプ氏に話していると各紙は報じている。米国の分かりやすい、法に基づく剛速球に対して、日本は政治家が戦略のないまま苦し紛れの対応をする一方、官僚は塹壕の中に逃げを決め込んでいるかのようだ。
18年9月26日日米首脳会談
4月16日茂木大臣会見

 

本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。

近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人のコラム【TPPから見える風景】

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