コロナ感染拡大で売り物が増え始めた3年産米【熊野孝文・米マーケット情報】2022年1月25日
先週末Web上で開催された米穀業者の情報交換会で、参加者から従業員がコロナに感染、自宅待機させたが、当初7日間と自社のルールで決めていたものの仕事が回らないので5日間に短縮するつもりだという発言があった。これ以外にも子供が通う学校でのクラスターの発生など参加者のほとんどがコロナ禍に言及、事業継続給付金制度の活用方法が話題になるなどコメ業界にもオミクロン株の感染急拡大が深刻な懸念材料になっている。
オミクロン株の感染急拡大は回復傾向にあった業務用米需要に再び水を浴びせるような形で、業務用米販売のウエートが高い米穀業者は「先が見通せなくなった」と悲痛な声を上げている。想定外なことは量販店向けが主力の卸も家庭用精米の販売量が落ち込んでおり、この卸によると首都圏の大手卸はいずれも同じような状況で「ぬかの発生量から推すと1割程度落ち込んでいるのではないか」と見ている。その原因はふるさと納税やネット販売、縁故米の増加などがあるのではないかとみているが、はっきりとした要因は分からない。ただ、1月20日に行われた卸団体主催のFAX取引会で大量の売り物が出たことだけはハッキリしている。
卸団体100%の子会社クリスタルライスが主催した今年初めてのFAX取引会では前回より8%多い15万9063俵の売り物があった。表は主な産地銘柄の売り唱え価格を示したものだが、個別の産地銘柄では青森まっしぐらが9900円~1万200円(1等東京着基準税別、以下同)、岩手あきたこまち1万700円~1万1500円、ひとめぼれ1万500円~1万1400円、宮城つや姫1万900円~1万1000円、ひとめぼれ1万600円~1万1700円、秋田あきたこまち1万1600円~1万2100円、山形つや姫1万7800円~1万9100円、はえぬき1万500円~1万1100円、福島会津コシヒカリ1万2400円、中通1万100円~1万950円、天のつぶ9450円~1万300円、茨城コシヒカリ9900円~1万250円、ミルキークイーン1万500円~1万1200円、あさひの夢9300円、栃木コシヒカリ1万100円~1万650円、あさひの夢9200円~9600円、群馬あさひの夢9000円~9400円、埼玉彩のかがやき9750円、彩のきずな9000円、千葉コシヒカリ1万500円~1万550円、ふさおとめ9700円~1万700円、粒すけ9500円、新潟魚沼コシヒカリ2万3500円~2万6500円、一般コシヒカリ1万4250円~1万4800円、こしいぶき1万1100円~1万1300円、石川コシヒカリ1万1800円、富山コシヒカリ1万1750円~1万3350円などと言った具合で、前回の取引会の価格水準と比べるとほぼ横ばいだが、前年同期比では15%ほど安い水準。
売り物が増えた一方で買い声は低調で成約は進まなかった。例年1,2月の市中取引は活発ではないが、今年はそれにコロナ禍が追い打ちをかけているような状況。
精米販売は従来の安売り競争が一段と激しくなっており、中には5kg1000円を下回る価格で特売するディスカウント店も出始めた。
総務省の家計調査によると昨年11月のコメの購入量は前年同月比マイナス2.5%の5.1kg、パンはマイナス1.2%減の3.6、麺はプラス1.6%で2.9㎏になっている。昨年のコメの購入量推移を見ると前年同月を上回ったのは1月と8月だけでその他の月はいずれも前年同月を下回っている。総務省の家計調査でコメにとって明るい材料を探すとすると中食の弁当、寿司、おにぎりがいずれも前年同月を上回っており、それも110%から120%と言う高い伸びを示していることである。見方によっては家庭で炊飯する量が減ってその分中食需要が増えていると見ることも出来る。こうした食の変化は以前よりトレンドとして予測されており、コロナ禍によりそれが加速したとも捉えられる。さらには食品スーパーのレジ前にワンパック180gのパックご飯が59円(税別)で置かれており、それが午前中にはなくなるほど売れていることや大手量販店でもレジ横に大きなスペースを構え「生活応援・値上げしません!」と出して様々な食品を並べ、その中に精米ではなく自社ブランドで格安のパックご飯を置いていること。
コロナ禍のもう一つの側面として消費者の可処分所得が低下したことで食の面でもこの影響が出始めている。当たり前のことだが、価格の安いものの需要が広がるという現象が一層顕著になっている。冒頭に記した米穀業者の情報交換会で唯一の強気の発言は「4年産はBランク米の作付けが減るので安い3年産米を積んで置いた方が良い」と言うものであった。
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