岸田内閣に太郎がいない【森島 賢・正義派の農政論】2022年2月7日
表題の「太郎」は、河野太郎氏のことである。敬称を省略しているが、敬愛の念と親しみを込めて称しているので、ご無礼であればお許し願いたい。
河野氏は、菅 義偉内閣の守護神だった。自民党の救世主だったといってもいい。
衆知のように、河野氏は当時の首相の菅氏に請われて、コロナのワクチンの接種を急いだ。昨年7月7日には、1日間で146万3、718回ワクチンを打った(資料はオックスフォード大学のOur World in Data)。あの伝説の河野太郎氏のことである。
いままた、コロナ対策で急がれていることは、ワクチンの第3回目のブースター接種である。しかし、遅々として進んでいない。先週水曜日までに609万3、568回しか打っていない(同上の資料)。河野氏に請えば、僅か4日ほどで打ってしまっただろう。
いまから振り返ると、当時、菅内閣はコロナの第5波に飲まれて死に体になっていた。そこに守護神のように現れたのが河野氏だった。河野氏はワクチンで当時のデルタ株のコロナを制圧した。それが大きな原因になって、それに続く総選挙で自公が政権を維持できた。
もしも、河野氏が現れなかったら、ワクチンの接種が停滞したまま、コロナの大波のなかでの総選挙になっただろう。その結果、国民の怨嗟のなかで、自公政権は崩壊しただろう。
いままた、当時のようにコロナが猛威をふるっている。だが、菅内閣に代わった今の岸田文雄内閣には、河野氏のような、卓越した智力と胆力を、ともに兼ね備えた人がいない。
上の図は、コロナワクチンのブースター接種の進捗状況を、主要国についてみたものである。
ヨーロッパの主要国は、軒並み人口の50%を超えている。隣りの韓国も50%を超えている。だが、日本は最低で、まだ4.83%しか接種していない。1桁少ない。
コロナ制圧の切り札のワクチン接種が、この有様である。接種が遅れていることで、感染爆発が他国に類をみないほど激烈になっている。
犠牲になっているのは全ての国民である。ことに、病弱な高齢者や非正規労働者などの経済的弱者であり、しわ寄せを負う女性である。
先日、韓国から揶揄されたが、反論のしようがない。まことに恥ずかしいことである。
なぜ、こんな惨めなことになったのか。
◇
政府は、ブースター接種は、2回目の接種から8か月後にせよとか、忌避する人が多いとか、地方自治体の怠慢だ、といっている。
だが、8か月後の接種がいい、という科学的根拠はない。また、忌避や怠慢という事実はない。
事実は何か。それは、接種すべきワクチンを、政府が、ごく僅かしか持っていないことである。国内ではワクチンを生産する能力がなく、外国に頼るしかない。他方、外国からみれば、ワクチンは戦略物資である。それほど易々と日本に渡すわけにはいかない。
だから政府は、僅かしかないワクチンを少しづつ接種している。だから接種が遅れている。そして、その遅れの責任を地方自治体や国民に、なすり付けようとしている。
どうすればいいか。
◇
政府は、ワクチンが国内にないことを隠すのではなく、真摯に認め、その原因が、これまで国内でワクチン開発を怠ってきたことを正直に告白し、反省することである。(食糧も、やがてこうした事態になるだろう)
反省した上で、政府は国力を挙げて、ワクチンの調達と接種を早めることである。
それには、河野太郎氏に再度のお出ましを願うしかない。河野氏が持っている抜群の智力と胆力に頼るしかない。
河野氏を首相特使として外国に派遣し、全権を委ねて製薬会社と交渉し、早急に大量のワクチンを入手するしかない。
この未曽有の国難のなかで、岸田首相が礼を尽くせば、あの河野氏のことだから、意気に感じて、総裁選での仇敵だったことを忘れ、やってくれるだろう。
(2022.02.07)
(前回 事実と科学を無視するコロナ対策)
(前々回 若者棄民)
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