春期闘争「春闘」から「シュン・答(トウ)」へ【原田 康・目明き千人】2023年2月4日
毎年4月に始まる新年度の給与改定・ベースアップに向けての労使の交渉が1950年頃から全国規模で行われる様になった。個々の企業の労使の他に産業別の炭労、国労、全繊同盟等である。
労働組合側は経営側に賃上げをお願いしても十分な額が確保できないので争議権を確立してストライキなどの実力行使を背景の交渉となった。経営側はロックアウトで対応した。
春闘方式と呼ばれる様になったのは1955年頃からである。三井三池炭鉱の労働争議が歴史に残るものとなった。主要なエネルギーがこれまでの石炭から石油に移行をする時代となり炭鉱の縮小や閉山となり、三池炭鉱の大幅な人員整理への反対闘争が春闘のベ・アと重なった。
更に、1960年の安保反対闘争もあり世の中が騒然とした時代で三井三池の争議には経営側、労組側の双方に全国から応援が駆け付け「総労働対総資本」の春闘と云われた大規模の争議となった。
1970年代には全国各地で春闘が行われ国民春闘と云われた。一方で所得倍増計画や1970~90年にかけての高度成長の時代となり労働組合の力が弱くなった。新聞などの見出しも「春季労使交渉」となった。2014年の第二次安倍内閣がベースアップについて経営側に3%の具体的な数字をあげて賃上げを要請して「官製春闘」と呼ばれた。現在も新聞やテレビなどの見出しには「春闘」もあるがほとんどは「春の労使交渉」となった。
交渉も静かにシュンとして回答を受け取る「シュン・答(トウ)」となった。経営側には政府の後押しがあり、マスコミも物価の値上げに見合った賃上げの応援をしている。給与の改定はベースアップを契機として年功序列などの人事制度の抜本的な見直し、働き方の改革や労働の生産性を上げること、企業の新陳代謝による産業構造の再編成など多くの課題が提起されている。
労働組合の加入率は昨年度で16・5%である。働き手の7割近くを中小企業が雇用している。最近の東京新聞のアンケートによれば中小企業の7割以上が「賃上げの予定なし」と回答した。コストの増加分を価格に転嫁できないことによる。中小企業や非正規の人達との格差の拡大が懸念される。このような課題への対応は労使ではなく政府の責任である。
(原田康)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日