シンとんぼ(33)スマート農業は役に立つのか?⑦2023年3月4日
シンとんぼは、現在、スマート農業が本当に役立つものなのかをテーマに検証するため、農水省ホームページに紹介されているスマート農業技術を①GPSを利用した自動操舵・制御による農業機械、②農業用ドローン、③水管理システム、④自動草刈り機、⑤収穫機、⑥出荷調整機の6つに整理し、検証を進めている。
今回は、③水管理システムを検証してみよう。
農業を行う上で欠かせないのは水やりだ。水稲作はもちろんだが、園芸作、特に環境制御型の栽培では水管理が欠かせず、品質や収量に影響するとても重要な作業である。ところが、この水やりの作業は、見た目以上に大変な作業で、時間がかかる。水稲の水やりでは、水口の開け閉め、水尻の開け閉め作業はもちろんのこと、水が溜まるまでの待機時間や、離れた水田への移動時間も加わり、地味な作業の割に時間がかかって大変である。集落営農ではさらにその傾向が強くなり、水の見回り当番になったら、集落営農メンバーの水田を1つ1つ見て回る必要があり、たくさんの水田の水口を開けて回るだけでも大変である。それに加え、水が溜まったらオーバーフローする前に水口を閉めに行かなければならず、筆数が多くなればなるほど、作業にかかる時間とストレスが大きくなる。管理する水田が離れた場所にあったりすると、移動に時間がかかり、実作業時間が短くても労働時間が長くなってしまう。
この重労働ではないが拘束時間や移動時間が長くなる水管理という作業を自動化できれば、かなりの負担軽減になる。このことは、どの農家も異口同音に述べており、異論をはさむ余地はないだろう。あとは、どうやって自動化するかが重要になるので、現在の技術の状況をまずは水田用の水管理システムから検証してみる。日本の水田の灌漑設備は、大きく分けて加圧式パイプラインと農業用水路から水を引くタイプがあり、日本では後者のいわゆる開放系のものが7割以上あり圧倒的多数を占める。
パイプラインに対応するものは、パイプラインの水栓に装着できるタイプのものが主流である。パイプラインにはポンプで加圧した水が来ているので、水位センサーの情報をもとにバルブを開閉する駆動装置と制御装置が一体となったものが既に市販されている。オプションでスマートフォンからの遠隔操作で水栓を開閉できるものもあり、水管理の機能としては十分なものがすでにある。問題は費用だが、1基あたり10万円を軽く超過するものが主流なので、筆数が多くなるとかなりコスト高になる。水管理の作業労賃と比較して導入を検討する必要がありそうだ。この辺のところは、次回開放系水路に向けた装置を検証しながら深堀りしてみようと思う。
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