雑草も商品【花づくりの現場から 宇田明】第13回2023年7月13日
「雑草という草はない」と言ったのはNHK朝ドラの主人公 牧野富太郎博士。このことばは、花産業の本質をよく表しています。当コラムの第1回は「『花き』の『き』ってなに」でした。花きの「き」は漢字で書くと「卉」ですが、常用漢字にないのでひらがなにしています。「花」も「卉」も観賞植物という意味です。したがって、観賞できる植物はすべて花きです。雑草と呼ばれている植物も観賞できれば花きです。観賞できるかできないかは人の主観ですから、すべての雑草は花きであり商品になりえます。
「タラスピ」
いま人気沸騰の「雑草」がぺんぺん草(ナズナ)(上の画像)。
道ばたに勝手に生えている雑草という固定観念を取りされば、自然風味あふれる花材です。
ナズナは春の七草のひとつであり食用になりますが、花きとして観賞しているのはヨーロッパ原産の外来雑草グンバイナズナ(Thlaspi arvense)。
たねのかたちがナズナは三味線のバチのカタチですが、グンバイナズナは行司さんの軍配に似ています。
植物分類学的にはおなじアブラナ科ですが、ナズナはナズナ(Capsella)属で、グンバイナズナはタラスピ(Thlaspi)属。
イスラエルから、10年ほど前に切り花として輸入され、人気に火がつきました。流通名は「タラスピ」、あるいは「西洋ナズナ」。
いまでは国内で1年中ハウス栽培されています。
イスラエルでは、ギシギシ(Rumex;種名は不明)も栽培されているそうです。
雑草が観賞用になるには、花屋さんにお金を出して仕入れてもらわなければなりません。
最初、市場に出荷されてきたタラスピを見た花屋さんは、「その辺に生えているぺんぺん草を、わざわざ金を出して買う花屋なんているの?」と思ったそうです。
ところが先入観をもたない若い花屋や、田園風スタイルを好むデザイナーが花束やアレンジに使ってみると意外にイケル。目からウロコ。
観賞用として定着し、嫌われものの「雑草」であることが忘れさられたのが「ヨウシュヤマゴボウ(Phytolacca americana)」。
アスファルトの割れ目から突然生えてくるたくましい北アメリカ原産の帰化植物。草丈が1~2mあり、花だけでなく黒い実も大きな葉もインパクトが強く、デザイナー好みの雑草で、大型のアレンジなどにぴったり。
穂のかたちがおもしろいエノコログサ(ネコジャラシ;Setaria viridis)は生け花によく使われ、ドライフラワーとしても花材になっています。
まさかと思っていましたが、ハルジオン(Erigeron philadelphicus)まで出荷されています。
日本は植物の宝庫。
商品化できる植物は身のまわりに無限にあり、視点をすこし変えるだけで、価値あるものに変身します。
それが花き園芸の原点であり、醍醐味であり、活力の源。
しかも花き園芸は貪欲。
商品になると思えば雑草でも野草でも栽培する。
ただし、生産者の熱い想いだけでは商品にならない。
花屋あっての花農家。
花屋さんに買っていただけて、はじめて道ばたに生えている雑草が商品になる。
花屋さんに持続的に買ってもらうには、鮮度保持対策はもちろん、優良な系統を選抜し、ダニ、アブラムシなど害虫を防除し、規格を決め、選別するなど、花きとしての作業が不可欠です。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(94) -みどりの食料システム戦略対応 現場はどう動くべきか(3)-2024年5月18日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(11)【防除学習帖】 第250回2024年5月18日
-
土壌診断の基礎知識(20)【今さら聞けない営農情報】第250回2024年5月18日
-
出生率低下が心配【消費者の目・花ちゃん】2024年5月18日
-
農政 変わるチャンスへ動く年に JA全青協通常総会2024年5月17日
-
新執行部の決意示す JA全青協が記者会見で抱負2024年5月17日
-
【注意報】小麦、六条大麦、二条大麦に赤かび病 県内全域で多発のおそれ 栃木県2024年5月17日
-
【注意報】果樹全般にカメムシ類 県内全域で多発のおそれ 大阪府2024年5月17日
-
コメ・水田農業の将来に危機感示した渡辺会長【熊野孝文・米マーケット情報】2024年5月17日
-
【注意報】茶に炭疽病 県内全域で多発のおそれ 長崎県2024年5月17日
-
生命と財産守る活動 一歩ずつ前に JA共済優績組合表彰式 JA共済連2024年5月17日
-
(384)本当の「不平等状態」改正【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2024年5月17日
-
契約実行高、当期純利益で過去最高を更新 2024年3月期決算 JA三井リース2024年5月17日
-
【JA人事】JA帯広大正(北海道)森和裕組合長を再任(5月16日)2024年5月17日
-
北海道HACCP「食の安全にこだわる2024」発行2024年5月17日
-
濃厚マンゴーと相性抜群のスイーツが登場 自由が丘「一果房」で17日から 青木商店2024年5月17日
-
スマート農業システム開発のディーピーティー「JAGRI KYUSHU」に出展2024年5月17日
-
「マッスルスーツ」累計出荷台数が3万台を突破 イノフィス2024年5月17日
-
米・米粉の可能性を広げるBtoB展示会を9月に開催 cotta2024年5月17日
-
農薬出荷数量は6.8%減、農薬出荷金額は3.0%減 2024年農薬年度3月末出荷実績 クロップライフジャパン2024年5月17日