2023年の花産業は「品薄単価高」【花づくりの現場から 宇田明】第25回2023年12月28日
2023年の花産業は、昨年に続き「品薄単価高」でした。
生産者は、高単価で見かけは好調。しかし、生産コストが上がっているので、経営がよくなったわけではありません。
花屋は、価格転嫁ができず、仕入れ原価のアップで苦しんでいます。
市場は、取扱数量が減って単価が上がったので、空前の利益。
2023年の切り花の需要と供給の変化をふり返ります。

図は、東京都中央卸売市場花き部6卸売業者の切り花入荷量と単価(税込)の推移。
入荷量、単価には輸入が含まれています。
2023年は1月から11月までのデータですが、12月は昨年並みの入荷量が予想されていますので、年間では前年と同じか微減でしょう。
切り花の生産は1990年代がピークで、その後30年近く減りつづけています。
そのことは、図のコロナ禍前の2019年までの市場入荷量と単価をみるとよくわかります。
コロナ禍前は入荷量が微減、単価が微増。
生産者は、需要の減少に対応して供給(生産)を減らし、なんとか単価を維持してきました。
毎年、「需要が減る→生産を減らす」のいたちごっこ。
気がつくと、生産量はピーク時の40%減。
その需要と供給のいたちごっこが、2020年からのコロナ禍で一挙に変わりました。
花の需要が消失したのです。
花の需要には、業務需要と家庭需要があります。
業務需要は、結婚式、葬儀、イベント会場やホテルロビーなどの装飾や高級ギフトなど。
家庭需要は、仏花、墓花、家庭の装飾などです。
コロナ禍で、結婚式や葬儀、コンサートなどのイベントが中止あるいは延期になり業務需要が激減。
売り先をなくした切り花が廃棄されるロスフラワーがニュースになり、花づくりをやめたり、野菜などに転作する農家が続出。
とはいえ、経済が完全に止まったのではありません。
21年、22年もコロナ禍は大きな脅威のままでしたが、経済はジワリと活動を再開し、業務需要がかなり回復しました。
一方、食料安保で指摘されているように、一旦減った生産はすぐには回復しません。
もともと高齢化でリタイアする花農家が多いので、生産の現状維持すら困難です。
その結果、需要が回復したのに、供給(生産)が減ったままで、花産業にとっては1990年代以来の需要>供給。
経験したことがないような「品薄単価高」。
コロナ禍前の2019年の切り花平均単価は67円。
22年には80円(19年対比19%増)、23年は11月までですが82円(同22%増)にアップ。
戦後から1990年代まで花産業が急激に成長したのは、高度経済成長により需要が拡大しつづけたからです。
つくればいくらでも売れた「品薄単価高」が常態化していた時代。
おなじ「品薄単価高」でも、22年、23年は需要が拡大したからではありません。
急減した需要が19年レベルに戻ったのに、供給が減ったままのための一時的な需要>供給。
砂上の楼閣の「品薄単価高」。
困ったときの輸入頼みが花産業。
コロナ禍では、グローバルな輸送の混乱や労働力の不足など輸出国の事情や円安が加わり、輸入が国産の減少をカバーできなかった。
輸入業者がいつまでも指をくわえて見ているはずがない。
輸入が回復し、いつもの「供給過剰単価安」に戻るのは時間の問題。
需要を拡大しないかぎり、花産業は縮小するばかり。
2024年は、生産・流通・小売のみんなが汗をかき、地道に需要拡大に取りくみましょう。
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