卸売市場あっての花産業【花づくりの現場から 宇田明】第27回2024年1月25日
農家がつくった花は、野菜や果実などおなじように卸売市場に出荷され、せりや相対などで値がつけられています。
花の卸売市場経由率は70%(2019年)で、野菜の63%、果実の36%よりは高いが、年々下がっています。
経由率が下がっている原因として、スーパー・量販が農家や農協から直接仕入れる量が増えているからと考えられていますが、誤解です。
そもそも卸売市場経由率はどのように調べられているのか。
農水省の資料では、卸売市場経由率(%)=卸売市場経由量/総流通量(青果は重量、花は金額)。
経由量、総流通量には、国産だけでなく輸入品、生鮮だけでなく加工品が含まれています。
また、花は切り花、鉢もの、苗ものの総量。
分母、分子から輸入品、加工品を除くと、国産切り花は推定で9割以上が卸売市場に出荷されています。
仲卸の産地からの直荷引き、直売所、農家自らのネット販売などの市場外流通は1割以下にすぎません。
国産の生鮮野菜でも8割以上が卸売市場に出荷されていると考えられています。
そのため、花や青果をつくる農家の経営は、市場相場に左右されます。
国産切り花の市場経由率が高いのは、大量に生産された生鮮切り花を瞬時にさばけるのは市場しかないからです。
とくに花は流通している品目が切り花だけで1,100種類あり、野菜の200種類、果実の100種類より圧倒的に多いうえに、多くの品種、等階級があります。
花屋は、つねに多様な品目の花が必要で、それを安定して仕入れることができるのは市場しかありません。
そのため花市場はオール買参人制度をとり、零細な花屋でもせりに参加することができます。
スーパー・量販であっても、多様な品目を独自に産地から仕入れることは困難で、卸売業者や仲卸に頼るしかありません。
農家や農協が市場に出荷する最大の理由は卸売市場のもつ決済機能。
農家は安全保障や国土保全のために農業をしているのでも、趣味でつくっているのでもない。
経済行為として農業を生業としています。
したがって、「つくってなんぼ」ではなく、「売れてなんぼ」。
さらに、売った代金は確実に手にしなければならない。
すなわち、「売れてなんぼ」でもなく、「代金が振り込まれてなんぼ」。
その代金回収がもっとも安全で確実なのが卸売市場。
商物分離で花を直接小売業者に送っても、伝票は市場をとおす。
手数料9.5%(地方卸売市場は10%)を払っても、期日には確実に振り込まれる安心感が零細な農家や農協にはもっともたいせつなこと。
卸売市場は農産物の公正公平な値付けの場としても重要。
100年前、公正公平な値付けと確実な代金決済を求めて、生産者自らが花市場を設立したが、その意義は現在でも変わっていない。
(花づくりの現場から第23回「花市場開設100年」、花づくりの現場から第24回「100年前に花市場を創った温室経営者たち」)
日本農業新聞が調査した2024年花の販売キーワードベスト3は、「物流」、「価格転嫁」、「安定供給」(2024年1月13日)。
物流は2024年問題の当年を迎え、生産・流通それぞれで対策がすすんでいる。
安定供給は生産者の責務であり、永遠の課題。
価格転嫁は、カカクテンカ、カカクテンカと叫んでみても、労働組合と経営者との交渉ではないので、なんともならない。
また、米麦、畜産のように国がなんとかしてくれるものでもない。
花のカカクテンカは、市場で高単価をとることで農家自らの力で達成できます。
2022年、23年は品薄で空前の単価高。
(花づくりの現場から第25回「2023年の花産業は『品薄単価高』」)
生産者や産地がカカクテンカに励んだ成果ではありません。
コロナ禍で激減した需要がある程度回復したのに、供給(生産)が減ったままでの一時的な「需要>供給」。
農家が再生産のできる価格を得るには、買手がほしい商品をほしいときに出荷するという市場経済の原則と持続的な需要拡大活動が必要です。
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