「春闘」から「シュン答」へ【原田 康・目明き千人】2024年3月2日
毎年2~3月には4月からの新年度のベース・アップ等の給与改定の労使交渉が行われる。経営者と労働組合の団体交渉である。
現在はこの労使交渉をめぐってストライキ等の労働争議はほとんど行われないが1990年代までの労使交渉は双方が実力行使を背景に厳しい交渉、春季の賃上げ闘争、いわゆる「春闘」といわれる団体交渉があった。
経営者側は国際化が進む厳しい経営環境の中で将来にわたってコスト高となるベース・アップは会社の利益に大きな影響を与えるので最小限とする必要があり、一方の労働者側は生活費等の増大による苦しい生活から大幅のべ・アを要求した。
労働組合側はそれぞれの組合が組合員大会を開いてストライキを含む争議権を確立し、それを背景に団体交渉に臨んだ。
一方経営者側も職場への出入りを禁止するロックアウトや場合によっては警察の機動隊の出動要請も含めた真剣勝負の交渉となった。団体交渉の労働組合側の役員もその企業の従業員であり、活発な組合運動は当然人事評価に反映をされ人事異動では左遷等のあることを覚悟したうえでの組合の役員となり活動であった。
交渉は厳しいものとなったが、労働組合は企業内の労組であるのでベース・アップ等は会社のコストアップになることも理解しており日常の業務が忙しくなることや、新規事業等には協力した。
経営側も優秀な従業員を確保するためには世間並みのべ・アの必要を認めた。労・使双方がそれぞれの立場を踏まえたうえで、企業内労使という馴れ合いという交渉ではない真剣な団体交渉が行われた。
現在の「春季労使交渉」は様変わりしているのではないか。一番の違いは労働組合が弱くなったことである。
労働組合と経営者との団体交渉は、労働組合の要求が認められない時には職場集会や時間外労働の拒否、場合によってはストライキを含めた実力行使を背景にした労使が対等の立場での交渉である。理論闘争では賃金は上がらない。
「春闘」が「シュンとして回答を受け取る」交渉となってないか。
(原田 康)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日