オークネットを手本にした完全オンラインせりの花卸売市場【花づくりの現場から 宇田明】第32回2024年4月4日
1990年代からの花の卸売市場の再編大型化の過程で、花業界が想定していなかった市場が登場しました。
1997年に中古車販売のオークネットが花の卸売業に参入。同社は対面せりをおこなわず、完全オンラインせり(在宅せり)の花市場です。
産地から入荷した花は交通の便がよい場所で検品、分荷され、本社機能は東京のビル内にある卸売市場法が想定外の情報流通市場。
農水省と既存花市場が手本にしたオランダ花市場の本質である情報取引を、異業種のオークネットが実現しました。
オークネットという手本があったから、既存市場がオンラインせりをスムーズに導入することができ、コロナ禍をも乗りきることができました。
花には素人だった異業種オークネットは、上場した花の実物を買参人に見せなくてもオンラインで問題なく売買できることを実証しました。
しかも、2020年には老舗の卸売市場を買収し、取扱高が全市場の5位にまで成長。
既存市場もオンラインせりを認めざるを得なくなりました。
既存花市場の業務改善を一気にすすめたのがコロナ禍。
せり場は代表的な「密閉・密集・密接」の三密で、きわめて感染しやすい環境。
そのとき参考にしたのがオークネットのオンラインによる在宅せり。
買参人は市場に来なくても、花店、自宅からせりに参加できます。
まず、既存花市場が採用したのは、従来通りの対面せりと、オンラインでせりに参加するハイブリッド方式。
大阪鶴見花き地方卸売市場(卸売業者としてなにわ花いちばとJF鶴見花きが入場)だけは、一挙にせり場を閉鎖して対面せりを廃止、完全オンラインせりに移行。
前回画像で示したように、同市場にはせり機が11台、買参人席が700席あまりの全国でもっとも大きなせり場があります。
当初はコロナ感染防止が主目的であったから、オンラインせりといってもスポーツの無観客試合で、せり人はカメラに向かって対面せりのように実際にせりをしていました。
せりの動画配信は、上場された花やせり人の動きを見られるので臨場感があります。
残念なことに、参加する花屋すべての通信環境が良好とはいえず、通信容量が大きい動画では画面の乱れや停止などのトラブルが発生することがあります。
そこで、同市場は上場する花だけの静止画配信に転換。
静止画配信では、写真のように事務所内のパソコンだけでせりが完結できます。
せり人への補助、荷出し作業などの人員が不要になり、せり時間も短縮され、大幅な省力化がはかられます。
さらに、せり場が不要で、照明、空調、せり機・端末機の維持管理などのコストが削減。
上場される花を見て価値を見きわめたい花屋やパソコンが苦手な花屋などは、対面せりにこだわりましたが、早朝に市場に出向く必要がないので、遠隔地の花屋は大歓迎。
日本の花卸売市場は、機械せりからオンラインせりによる情報取引への移行で、手本のオランダに一歩近づいたように見えますが、トータルなデジタル化は大幅に遅れています。
情報取引の入り口である生産者・産地からの出荷情報はいまだにFAXが主流。
FAXで送られてきたデータを、市場担当者がパソコンに手入力するアナログ作業に膨大な時間を費やしています。
また生産者・産地には市場から先がいまだにブラックボックス。
出荷した花がだれに買われてどんな用途に使われているか、評価はどうかなどの情報が生産者に還元されていません。
完全オンラインせりの導入と並行して、出荷情報のデジタル化と、生産者、小売双方への情報伝達システムの構築が必要です。
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