天の声が聞こえてきた第一回SBS入札【熊野孝文・米マーケット情報】2024年9月10日
農水省は9月6日、今年度第1回目のSBS入札を実施、その結果を公表した。(SBS方式とは、買い手と売り手の連名による売買同時契約のこと。)それによる輸入枠2万5000t(含む砕精米枠2500t)に対して3倍に当たる7万5732tの応札があり全量が落札された。SBS米の輸入枠は年間10万㌧あるが、10万㌧全量の輸入枠が埋まったのは平成29年度が最後で、それ以降、国内でのコメ価格が低迷したことや円安や豪州やカリフォルニア米の不作等で輸入価格が上昇したこともあって輸入量が低迷していた。今回は国内の米価が急騰しており、価格の安い外国産米のニーズが高まり、応札意欲が盛り上がった。入札は4回行われる予定で10万tの枠がすべて埋まり、外国産米がスーパーの店頭を飾ることになりそう。
別表は今年度第1回SBS入札の国別落札数量とトン当たりの売り渡し価格を示したものだが、最も多く落札されたのはアメリカ産米で1万7262tが落札され、全体の77%を占めている。なかでもうるち精米中粒種は1万6942tが落札されており、SBSで輸入される外国産米の主力になっている。前年度のSBSでの落札は振るわなかったが、それでもアメリカ産うるち精米中粒種は3万1102tが落札、輸入されている。これらはカルローズと精米袋に表示され、スーパーで現在販売されており、5㎏当たりの販売価格が1890円程度で、国産米に比べ割安なこともあって売れ行きが良いという。
今回のSBS入札をアメリカ産うるち精米中粒種に絞って見てみると、申込件数は120件で4万7773tの応札があった。買入価格は㌧当たり16万2638円(税別以下同)で売渡価格は29万4205円になっている。その差額は15万9886円で、マークアップ㌔160円の限界ラインで激烈な競争が行われたことが伺える。いかに国内の米価が上がっているとは言え、㌔300円近い価格で応札されたということは、外食等特定の需要者と結び付いている卸からの引き合いが強かったと推測される。外食企業にとっても6年産国産米の高値が続くと、新米の切り替え時に納入業者からびっくりするような高値の精米納入価格を提示されることが必至で、少しでも割安なカルローズに触手が動いたということなのだろう。
卸がカルローズを落札してスーパー店頭に並べる場合、運賃や入出庫料、袋詰め代金等で㌔40円程度はかかるので、自社のマージンを入れると㌔400円近い納入価格を提示したいところ。それでもスーパーの店頭価格は5㌔2000円台前半で国産米より大幅に安く販売できることに変わりない。輸入商社の中にはアメリカの輸出業者に年産別の割合を示して輸入するところもあるが、国内でカルローズを販売する場合、年産表示は必要ない。なぜなら日本では検査機関が国内産米の年産表示を義務づけられているが、アメリカの検査機関はそうした義務は負わない。
年産表示はともかく外国産米を長年輸入販売している業者の中には、今回のSBSでの高値を危惧しているところもある。それは今回落札された外国産米が国内に入船する時期は年末ごろになる予定で、そのころは国産米の収穫が明らかになり、豊作型でかつ飼料用米からの主食用米への切り替えが多いことがはっきりして主食用米の生産量が予想以上に増える可能性があるため、国産米の価格が下がり、カルローズの販売に苦戦することになるのではと懸念している。そうした見方とは真っ向違った見方をするところもある。それは6年産米の早食いがこの端境期のコメ不足でかつてないほど進んでおり、仮に6年産米の主食用米の生産量が30万t増えても需給は緩まないと見ている。それに加え、今回のSBS入札の直前、天の声が聞こえたというのだ。
天の声とは、SBS入札の前には応札商社は当然のこととしてマークアップがどのくらいになるのか情報合戦を繰り広げる。その中で「マークアップを下げる必要はないだろう」との天の声が聞こえてきたというのだ。天の声はこれ以外にまだある。9日には10月~12月分の加工用向けMA米売却入札が行われたが、アメリカ産うるち精米中粒種の現地価格は値下がりしているにも関わらず、前回応札価格で札入れしたものの落札できなかったのだ。応札した側は「コメと名の付くものはすべて値上げする」という天の声だと受け取っている。
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