騙した党が悪いのか信じた民がバカなのか 【小松泰信・地方の眼力】2024年10月16日
「一番のミスは郵政民営化だ。地方の拠点となる郵便局が減ってしまった。小泉純一郎(元首相)にだまされた」と述べたのは、政界引退を発表した自民党の奥野信亮前衆院議員(9月13日の記者会見で)。
小泉劇場の教訓
仲間割れの喧嘩なら仲間同士でやってくれ。内部告発なら遅すぎる。組織が同じ過ちをくり返さぬよう、気づいた時に離党、辞職覚悟で告発すべきである。それとも、「こんな遺伝子を持つ政党は信じるに値しないから、これからはこの党には投票するな」と、懺悔しながら伝えているのか。今ごろになって、まっとうな政治家を演じても時すでに遅し。
小泉氏の夢が叶った郵政民営化の成果のひとつか、10月1日より郵便料金が大幅値上げとなった。
これをマクラにした読者の投稿に同感(東京新聞、10月16日付、東京都在住76歳)。
「(前略)2007年10月の郵政民営化から17年がたち、小泉純一郎元首相がいう民営化により『ばら色のサービスが可能』どころか、義務付けられたユニバーサルサービスの維持すら風前のともしびだ。小泉氏は『郵便局はなくさない』と言っていたが、民営化以降すでに多くの郵便局が廃止されている。国民生活の営み、情報交換には郵便サービスの充実がかかせない。今回の大幅値上げは、まさに『郵政民営化の破綻』を象徴しているのではないか」
思い起こせば、2005年8月8日、参院本会議。「改革の本丸」と位置付けた郵政民営化関連法案が自民党議員の大量造反で否決されると、小泉氏は衆院解散に踏み切った。郵政造反組37人を「抵抗勢力」と呼び、選挙区に刺客候補を送った。狂気の沙汰とも思える「小泉劇場」に熱狂した有権者の投票行動で、自民党は圧勝。小泉氏の夢は実現したが、国民は悪夢を見ることに。
選挙で国民の「信」を問うほどのことではなかった、と気づいたときはもう遅い。アノトキミンナバカダッタ♪
変わりそうで変わらない、で良いのか!
共同通信社は10月12・13日に衆院選に対する有権者の関心や支持動向を探るための全国電話世論調査(第1回トレンド調査)を実施した。回答者数は1,264人。注目した結果概要は次の通り。
(1) 衆院選への関心度については、大別して「関心あり」75.5%、「関心無し」24.2%。
(2) 投票時に重視すること(ふたつまで回答可)は、最も多いのが「景気・雇用・物価高対策」57.0%、これに「年金や社会保障」38.4%、「子育て・少子化」20.5%、「外交・安全保障」15.9%、「政治とカネ問題」14.4%が続いている。「地域活性化」は9.7%で1割を切り、「憲法改正」に至っては5.2%である。有権者の関心は生活に密着したところにある。
(3) 「選択的夫婦別姓制度」の導入については、「賛成」66.9%、「反対」22.2%。世論は割れていないことがうかがえる。
(4) 健康保険証の新規発行廃止(マイナカードに一本化)については、「賛成」42.2%、「反対」51.9%。
(5) 裏金議員への自民党の対応については、「十分」22.1%、「不十分」71.6%。
(6) 投票時に裏金事件を考慮するかについては、大別して「考慮する」65.2%、「考慮しない」32.2%。
ここまで見れば、現政権の終焉を感じさせるが、そうは問屋が卸さない。
(7) 望ましい選挙結果は、「与野党伯仲」50.7%、「与党が上回る」27.1%、「与野党逆転」15.1%。要するに、自公政権で良い。ただし、大勝ちしたらまた悪さするからダメ、という判断。
(8) 支持政党と比例代表での投票先との関連性を、自民党に絞って整理すると次のようになる。
「自民党支持」は37.7%で、比例で「自民党」に投票するのは26.4%。11.3ポイントに愛想をつかされているように見られる。ところが、比例での投票先を「まだ決めていない」とするのが33.2%。「支持する政党はない」が21.1%なので、「まだ決めていない」と「支持する政党はない」が、悩める有権者と考えるならば、この層が12.1ポイントの増。つまり、自民党に愛想をつかした有権者のほとんどが「支持する政党はない」と回答したと推察される。
自民党に愛想をつかした人達が、結局自民党に入れる人や、親和性の高い野党に入れる人に散らばるとすれば、現時点では、野党への雪崩的現象は起こらず、「与野党伯仲」一歩手前ぐらいで落ち着くことが想定される。
それで、良いのか有権者各位。
禊ぎ無用に存じます
毎日新聞(10月13日付日曜くらぶB)の同一紙面で、松尾貴史氏(放送タレント)と海原純子氏(心療内科医)がそれぞれのコーナーで今回の選挙に言及している。
「私は政治評論家ではないが、ひとりの国民として、またひとりの心療内科医としてこの時期の解散・総選挙についてあんまりだ、と思う。この時期の選挙は被災地の人々や役所にとり酷であることは間違いない。これは例えば、大けがをして病院に運ばれてきた人がいるときに、医師が病院内にいるのに『病院改革改善の会議をするのでしばらくそのままお待ちください』と言うようなものではないか、と思った。痛みを抱える人は不安と怒りが起きて病院に対する不信が起きるはずだ。被災地の映像を見ると息をのむような悲惨な状態だ。80歳の女性が家の片づけをしながら、『地震の時より心が折れる』と語っていた。濁流で流された少女の父親が涙をこらえて取材を受けていた。心の危機は一刻も早い支援が必要で、政治でしかできないことがたくさんあり、それを今すぐにしてほしいと思う」と、海原氏は訴えている。
松尾氏は、「国民の多くが困窮する経済状況の改善も後回し、大地震で壊滅的な被害を受け、さらに激甚な豪雨で悲惨な状態になってしまった能登の、復興の道筋をつける補正予算の審議もしない。『今選挙をやれば勝てる!』という浅ましいもくろみで解散してしまう人物(小松注;石破首相)だったことに、ただただ驚いている。裏金などの疑いが残る議員の検証も調査も不十分なまま、旧統一教会とのつながりを断ち切れない、いわゆる『壺(つぼ)議員』と向き合うこともなく、選挙を『簡略化したみそぎ』としか捉えていないような所業ではないか」と憤る。
みそぎと言えば、自民党の森山裕幹事長が14日、派閥の政治資金パーティー裏金事件で政治資金収支報告書の不記載があった前議員らについて「選挙を経るということは国民の信任を受けたということだから、あまり差別が続いてはいけない」と述べ、衆院選で当選した場合には党の役職などに起用する可能性があるとの考えを示した。これ永田町にしか通じぬ理屈。
キーボードを叩いているたった今、お詫び行脚の宣伝カーが町内を走っている。
うっせぇうっせぇうっせぇわ! 謝罪無用。御党の骨の髄までしみ込んだ罪と穢れはどんな禊ぎでも落ちません。
「地方の眼力」なめんなよ
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