シンとんぼ(117) -改正食料・農業・農村基本法(3)-2024年11月9日
シンとんぼには農業の持続的発展と食料の安定供給への切なる思いがあり、この思いが一日でも早く実現されることを願いながら、今後の農業を占う様々な事項についてして持論を展開している。現在、2024年6月に改正された食料・農業・農村基本法をしっかりと学び、同法を理解した上で農業関係者が何をしなければならないのかを思案を巡らせている。実際の具体的な内容については来年3月に出される予定の「食料・農業・農村基本計画」で明らかとなるだろうから、詳細の検討は後に行うこととし、まずは改正法から国の考え方の方向性を探っていこうと思う。
前回、改正法の第二条に追加された「食料安全保障の確保等」の中に、「食料の合理的な価格」と「食料の安定供給」の2つのキーワードがあり、特に前者は生産費の上昇分を農産物価格に正しく転嫁するためには一刻も早く実現してほしい内容であると述べ、1つ目のキーワードの「食料の合理的な価格」の形成について、「農産物の価格は、需給や品質が適切に反映しつつも農産物が安定して再生産ができるよう生産から販売の各段階で合理的な設定を行い、生産者等一部の関係者にしわ寄せがいかないように適正に形成」してほしいと述べた。
今回は、2つ目のキーワードである「食料の安定供給」について国の考えを探ってみよう。
改正法の第二条第4項には、「国民に対する食料の安定的な供給に当たっては、農業生産の基盤、食品産業の事業基盤等の食料の供給能力が確保されていることが重要であることに鑑み、国内の人口減少に伴う国内の食料の需要の減少が見込まれる中においては、国内への食料の供給に加え、海外への輸出を図ることで、農業及び食品産業の発展を通じた食料の供給能力の維持が図らなければならない。」とある。一見良さげな方向性に見えるのだが、この文面を単純に読み込むと、「現行の食料の供給を維持するだけの生産能力を維持すればよく、人口減少に伴う食料需要の減少により発生する余剰分は輸出に回せばよい。現状の生産能力を維持することを第一義に取り組む」といっているように思えるのはシンとんぼだけだろうか?
食料安全保障の確保を規定する条文なので、食料輸入が出来なくなった時のことを想定して自給率向上に向けた踏み込んだ内容が盛り込まれてもよかったのではないかと、ちょっと残念に思った。ま、このあたりの農業生産基盤の拡充にあたっては後でも出てくるようなのでの、期待して読み進めてみようと思う。
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