(418)日本初のグローバル化の功罪【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年1月17日
日本の歴史を振り返ると何度か大きなグローバル化の波を受けています。先週に引き続き、さらに昔を見てみましょう。
記録に残る最初のグローバル化は、恐らく6~8世紀、いわゆる飛鳥・奈良時代であろう。この時代の内容は小中高の社会・歴史・日本史などで学んだが、グローバル化という言葉を用いて学んだ記憶は余りない。貿易や文化・国際交流など、さまざまな個別事象として理解していた印象が強い。
だが、日本が体験した最初のグローバル化はまぎれもなくこの時代である。教科書的に言えば、中国や朝鮮半島から文字や文化・技術などが大量に流入した時代である。
最大の影響は、律令制度の導入により官僚制と法治国家が成立した点であろう。それ以前は部族国家から始まる小国家群時代であり、倭国の女王卑弥呼の記録は西暦247年、つまり3世紀半ばの日本がどのような状態であったかを示している。
その後、4~5世紀は大陸との交流が何度も記録に残る。6世紀になると当時の百済から仏教が伝わる。この当時も現代流に言う国際交流がかなり頻繁に存在したようだ。7世紀初めには官位十二階(603年)や、十七条の憲法(604年)が制定される。それからほぼ40年後が大化の改新(645年)である。
重要なのは、途中の西暦618年、大陸では煬帝の隋が滅び、高祖による唐が起こる点である。そして、唐は624年に新たな律令を定め、均田法や租庸調法を定めている。
こうした国際情勢の変化をいち早く理解し、渡来人の知識や技術を取り入れて当時の中央政界で権力を独占したのが蘇我氏(入鹿、馬子、蝦夷)であると考えればわかりやすい。大臣の地位を世襲し、皇位継承への影響力を行使するようになると、他の豪族たちからの反感が拡大する。その結果、政治・行政改革としての蘇我氏排除が大化の改新へとつながった訳だ。
こうした流れを踏まえ、当時の日本は唐を参考に、律令国家としての形を整える方向に歩みだす。統治機構が整備され、仏教が普及し、さらに先端技術が社会の各所で活用され始めた。代表例は建築である。法隆寺などの寺院建築は当時の最先端技術の粋を集めている。これは文化・芸術面にも大きな影響を与えている。
さらに、漢字の本格的導入により、社会全体としての制度・知識・学問などの基礎が築かれた点も大きい。以上が、この時代のグローバル化の最大のメリットの例であろう。
では、デメリットは何か。
言うまでもなく、建造物には建築費用がかかる。国内各所の国分寺の建立(741年詔発布、60か所以上)や、完成までに約10年をかけた奈良の大仏には国家予算の何割程度を費やしたのであろう。あくまで推定だが、使用されていた銅や金などの金属や動員された労力などを考慮すると、恐らく当時の国家予算の半分以上ではないだろうか。
当時の庶民は大半が農民である。班田収授法(652年)により人々は区分田を受領し、三世一身の法(723年)を経て、墾田永年私財法(743年)へと至るものの、現実生活では租庸調などの税負担が重くのしかかったようだ。不満を申し立てたり、逃げ出した農民の記録が残されている。急速な改革が不平等感を拡大し、社会不安を引き起こしたのであろう。現代の政策や庶民感情と比較してみると、1400年近く昔とは思えない臨場感がある。
実際、日本の律令制度は基本的に当時の唐の制度を参考にして取り入れたため、中には当時の実情や習慣などにそぐわない部分も存在したようだ。また、もしかしたら、この当時から、どこか海外には自分たちより優れた文明や社会が存在し、それを模倣すれば発展できるという海外依存型の考え方が深層心理に埋め込まれたのかもしれない。
これは、避けることができない形で異質の文明・文化に直面した場合、自らの独自性をどう保つかという極めて息の長い課題を当時も今も日本人が抱えていることを示している。
* *
割り切るのは簡単ですが、バランスを取るのは難しい...今も昔も同じですね。
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