肉用牛品種の黒毛和種 ゲノム情報利用による近交度評価法を開発 農研機構2024年4月11日
農研機構は、個体ごとの塩基配列の違い(ゲノム情報)を利用して、肉用牛の黒毛和種における近親交配の程度(近交度)を評価する方法を新たに開発した。家系情報を利用しなくても、ゲノム情報から正確な近交度を評価でき、育種現場だけでなく生産現場である農家でもゲノム情報を取得することで近交度を考慮した交配が可能となる。また、近交度の上昇による生産性の低下を防ぐことができる。
ゲノム情報を利用した近交度の評価手法の原理
日本の肉用牛の黒毛和種の育種は、霜降りを中心とした枝肉形質の改良を目的として、ごく少数の優秀な種雄牛を繁殖に供してきたため、集団内近交度の急激な上昇が懸念されている。一般に、近親交配により個体の近交度が高まると生物としての適応性が低下し、繁殖性、強健性、発育性などの能力が低下(近交退化)するため、黒毛和種集団の近交度を正確に評価し、その上昇を抑制するような交配計画を策定することが重要となる。
これまで近交度の算出には家系情報が利用されてきたが、農家で繁殖雌牛を新たに導入する場合など、家系情報が完備されていない場合があり、これらの個体について近交度を正確に評価するには課題があった。近年は、ゲノム解析技術の進歩で、数万規模の一塩基多型検出など大量のゲノム情報を容易に収集できるようになり、家系情報に代わる新たな情報として注目されている。
こうした背景を踏まえ、農研機構はゲノム情報を利用して黒毛和種の近交度を正確に評価する手法を開発。また、開発した評価法の性能を検証するため、家畜改良センターで飼育されている黒毛和種集団を対象に、最大で17世代まで整備された家系情報から算出した近交度と今回開発したゲノム情報から算出した近交度を比較したところ、両者の値はほぼ一致した。
同成果は、ゲノム情報のみでも正確な近交度の評価が可能であることを意味し、家系情報が充分に整備されていない場合でもゲノム情報を利用することで正確な近交度を評価できる。
日本の多くの育種現場には、黒毛和種のゲノム情報がすでに蓄積されており、同成果はただちに黒毛和種の近交度の上昇を抑制する対策に役立てることができる。また、今回は開発した評価法を黒毛和種に適用したが、豚などゲノム情報が得られる環境にあるすべての畜種にも活用できる。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(165)食料・農業・農村基本計画(7)世界の食料供給の不安定化2025年10月25日 -
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(82) 4-キノリル酢酸【防除学習帖】第321回2025年10月25日 -
農薬の正しい使い方(55)防除の要は第一次伝染時【今さら聞けない営農情報】第321回2025年10月25日 -
オリーブと広島【イタリア通信】2025年10月25日 -
【特殊報】果樹全般にチュウゴクアミガサハゴロモ 県内で発生と加害を初めて確認 広島県2025年10月24日 -
東京と大阪で「業務用米セミナー&交流会」 グレイン・エス・ピー2025年10月24日 -
どうなる日本の為替・金利の行方? 合理的価格形成のあり方は? アグリビジネス投資育成がセミナー(1)2025年10月24日 -
どうなる日本の為替・金利の行方? 合理的価格形成のあり方は? アグリビジネス投資育成がセミナー(2)2025年10月24日 -
【人事異動】農水省(10月21日付)2025年10月24日 -
生産者の米穀在庫量257kg 前年同月比17.4%減 農水省2025年10月24日 -
(458)農業AIは誰の記憶を使用しているか?【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月24日 -
甘みたっぷりブランド温州みかん 福岡県産「北原早生フェア」25日から開催 JA全農2025年10月24日 -
11月23日は『ねぎ』らいの日「小ねぎフェア」27日から開催 JA全農2025年10月24日 -
関西電力発行のトランジション・ボンドに投資 温室効果ガス削減を支援 JA共済連2025年10月24日 -
滋賀県産近江米「みずかがみ」など約50商品を送料負担なしで販売中 JAタウン2025年10月24日 -
寒さの中に咲く、あたたかな彩り「埼玉県加須市産シクラメン」販売開始 JAタウン2025年10月24日 -
JAタウン「あつめて、兵庫。」×「お肉の宅配 肉市場」コラボ特別セット販売2025年10月24日 -
【農と杜の独り言】第5回 水田のある博覧会 食料安保考える機会に 千葉大学客員教授・賀来宏和氏2025年10月24日 -
ありあけ「横濱ハーバーダブルマロン」で「ミャクミャク」「トゥンクトゥンク」 のコラボ商品発売 国際園芸博覧会協会2025年10月24日 -
鳥インフル スウェーデンからの生きた家きん、家きん肉等 輸入一時停止 農水省2025年10月24日


































