新農政へ、JAグループ組織協議2013年5月13日
JAグループは5月9日のJA全中理事会で26年度以降の新農政に関して「活力ある農業・地域づくりに向けて」と題する提言案を決めた。今後、組織協議を実施し6月の全中理事会でJAグループの提言として決定し、合わせて決める26年度予算要請とともに政府などへ提言実現を働きかけていく。
◆コスト削減競争からの脱却を
今回の提言の柱のひとつは「農業・農村の価値創出政策への転換」だ。
これまでわが国の農業者は規模拡大やコスト削減に取り組んできたものの、安い海外農産物の流入、景気の低迷、デフレによって農産物価格は下落、長期低迷を続けている。
この15年間で農業粗生産額は12兆円から8兆円、農業所得は5兆円から3兆円へと大きく低下した。
こうしたなか、大規模化・大量生産によるコスト削減と価格競争をめざした取り組みは、国土面積が狭い日本の実態からして限界があるとJAグループは強調する。
その一方では、安心・安全で品質の高い国産農畜産物への消費者の期待は高く、わが国の農畜産物や日本食は「知的財産というべき貴重な価値」であると指摘し、今後は単にコスト削減と価格競争を行う政策ではなく「農業・農村の価値を創出する政策へ転換する必要がある」として政府に「農業・農村の価値創造戦略の策定を求めていく。
◆正当な対価で所得向上
具体的には、▽地域の優れた農産物と食品の知的財産を明確化・保護する地理的表示制度▽安全・安心に向けた取り組みを表示する政策▽農村景観や自然環境を高め維持する政策、などを確立。消費者の理解を得て正当な対価によって所得向上を実現するとの考え方を打ち出している。
これを下支えする政策として、JAグループがこれまで主張してきたすべての農地を対象にする「日本型直接支払制度」の実現も提言していく。
また、農商工連携や6次産業化、バリューチェーンの展開など流通段階に農業者が参入することで付加価値を高めるとともに、その付加価値を地域や農業者に分配することで所得増大を図る政策の必要性も指摘している。 同時に経済政策の転換を適正に反映した農産物・食品価格を実現する政策の確立も求める。
安倍政権は2%のインフレ目標を打ち出し円安誘導を行っているが、あいかわらず農産物デフレのもと、円安による飼料・燃油の高騰など、生産コストは大幅に増大、生産現場を直撃している。これまではこうした事態に対しコスト削減と所得補償で対応してきたが、今回は大胆な金融緩和政策という政策転換を行っているなか、国民所得を増大させるとともに、販売価格の引き上げなど価格転嫁を進める政策も必要だと強調している。
ただ、当面は生産コストが増大している現状を緩和する政策が重要だとして、提言のとりまとめと合わせてJAグループは飼料・燃油の高騰に対する緊急対策も求めていく方針だ。
◆農地の面的集積の加速化を
世界人口の増大などで食料争奪と食料価格の高騰が続いていることから、食料増産による食料安保の強化も必要だと強調、そのための農地の面的集積の加速化、担い手育成策なども提言する。
具体的には▽農地集積協力金、規模拡大交付金、農地集積円滑化団体の体制整備支援▽面的集積を加速化させるための県農地保有合理化法人を中心とした農地集積の体制整備・機能強化と支援策、など実現を求めていく。
また、担い手育成策では、青年就農給付金の要件見直し(親元就農が対象となるような要件緩和)、集落営農の法人化支援(アドバイザーの配置など)、農業経営基盤強化準備金の拡充などを提言していく。
こうした政策提言とあわせ、今回は販売戦略の再構築などによる販売力強化や、担い手対応など営農支援、再生可能エネルギーの取り組みや食農教育など地域活性化といった政策転換に適応したJAグループ自らの取り組みも整理している。
(関連記事)
・TPP「引き続き総力挙げて反対」 JA全中通常総会での会長所信(2013.03.08)
・TPP交渉参加にはあくまで反対 JA全中会長が首相、農相に申し入れ (2013.03.01)
・「活力ある農業・地域政策提言プロジェクト」を設置 JA全中(2013.02.08)
・【提言】日本農業の未来を創る 体験に基づく私的農業論 JA全中副会長・村上光雄(2013.01.08)
・伊藤澄一 JA全中常務に聞く 「地域にあったJA独自の人づくりプランをつくろう」 インタビュアー:ジャーナリスト・榊田みどり氏(2012.10.05)
重要な記事
最新の記事
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の本田防除(1)育苗箱処理剤が柱2025年6月17日
-
【サステナ防除のすすめ2025】水稲の本田防除(2)雑草管理小まめに2025年6月17日
-
米 収穫量調査 衛星データなど新技術活用へ2025年6月17日
-
価格高騰で3人に1人が米の消費減 パンやうどん、パスタ消費が増加 エクスクリエの調査から2025年6月17日
-
備蓄米の格安放出で農家圧迫 米どころ秋田の大潟村議会 小泉農相に意見書送付2025年6月17日
-
深刻化するコメ加工食品業界の原料米確保情勢【熊野孝文・米マーケット情報】2025年6月17日
-
2025年産加工かぼちゃ出荷販売会議 香港輸出継続や規格外品の試験出荷で単収向上を JA全農みえ2025年6月17日
-
2024年産加工用契約栽培キャベツ出荷販売反省会を開催 旬別出荷計画の策定や「Z-GIS」の導入推進を確認 JA全農みえ2025年6月17日
-
和歌山「有田みかん大使」募集中 JAありだ共選協議会2025年6月17日
-
【浅野純次・読書の楽しみ】第110回2025年6月17日
-
「第100回山形農業まつり農機ショー」8月28~30日に開催 山形県農機協会2025年6月17日
-
北海道産赤肉メロン使用「とろける食感 ぎゅっとメロン」17日から発売 ファミリーマート2025年6月17日
-
中標津町と繊維リサイクル推進に関する協定締結 コープさっぽろ2025年6月17日
-
神奈川県職員採用 農政技術(農業土木)経験者募集 7月25日まで2025年6月17日
-
【役員人事】ノウタス(6月17日付)2025年6月17日
-
「九州うまいもの大集合」17日から開催 セブン‐イレブン2025年6月17日
-
農薬出荷数量は1.5%増、農薬出荷金額は2.8%増 2025年農薬年度4月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年6月17日
-
中国CHERVON社と代理店契約 EGO製品の国内販売を開始 井関農機2025年6月17日
-
鳥インフル ブラジルからの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年6月17日
-
戦後80年にできることは?情報誌『のんびる』7・8月号受注開始 パルシステム連合会2025年6月17日