持続可能な農業の実現に向けて 「全農リポート2018」発行2018年9月27日
JA全農は、全農の事業をはじめ現在取り組んでいる諸課題についてわかりやすく紹介・解説した「全農リポート2018」を発行した。
「全農リポート」は毎年発行されているが、2016年にそれまでのスタイルを一新し、株式会社ではできない協同組合としての全農の事業や協同組合としてのあり方を明確にするとともに、現実に取り組んでいる諸事業や課題について、歴史的な推移も含めて分かりやすく解説・紹介するリポートとして発行され今回で3年目となる。
全農についてあまり知らない人でも全農を理解する格好のテキストして、全農内部だけではなく外部からも高い評価を受けている。ちなみに(一社)農協協会でも、協同組合そして全農やJAグループの経済事業を理解するテキストとして内部研修で活用している。
(写真)全農リポート2018の表紙
新リポートとなって3年目の2018年版の内容は、「自己改革のさらなる加速、持続可能な農業の実現に向けて」をメインテーマに構成され、「急激なスピードで変化する生産・流通・消費構造をふまえ、...来年度から始まる新『中期3か年計画』で、今までの路線をしっかりと進めながら将来の事業モデルを構築し、変革期におけるJA支援強化をはかるために、さらなる改革を断行し、より現場に近づける効率的な事業運営・経営管理の検討」を進めることが、「5年後、10年後を見据えしっかりしたレールを敷いていくことが、組合員のため、そして明るい持続可能な農業につながっていくと確信しています」と、長澤豊経営管理委員会会長と神出元一理事長は冒頭のあいさつで述べている。
リポートの構成は、▽協同組合としての全農、▽海外ネットワークと産地多元化(肥料や飼料を調達する全農のネットワーク)、▽情勢「どうなる「日本の食事情」「訪れる食の新時代」「厳しい日本農業と明るい兆し」、▽「平成30年度事業計画のあらまし」と各事業ごとの「自己改革・展開と現況」、▽他企業との取り組み、▽トータル生産コスト低減の取り組み、▽全農の各事業の紹介が掲載されている。
事業については最新情報が紹介されているが、「協同組合としての全農」は、16年、17年と同じテーマで視点を少しづつ変えて記述されているので、3年分を合わせて読むのもいいのではないだろうか。
◆労働力支援や事業継承、Z-GISに注目を
そして今回のリポートで注目したいのが、事業等の紹介に続いて「労働力支援の取り組み」「営農支援の取り組み」の項目が設定されていることだ。
労働力支援について神出理事長はJAcomのインタビュー(【神出元一・JA全農代表理事理事長】生産者が実感できる「改革」実行)で「『プロダクトアウトからマーケットインへ』といわれますが、労働力がなくなりプロダクトが出てこなくなります」と、労働力支援は喫緊の問題と提起されたが、その取り組みの現状が報告されている。
さらに農業界の最重要課題として位置付けた「事業承継」の取り組み、「そして農業者の高齢化や労働力不足により農地集積がすすむなかで、担い手の作業の効率化・省力化を手助けする全農営農管理システム「Z-GIS」の取り組みを紹介していることだ。
こうした取り組みは、言葉は悪いが「売った・買った」という全農の事業に直接結びつくものではないが、全農の事業基盤である農家経営、地域農業が危機的な状況にあり、事業を超えて直接支援していかなければならない状況にあるという認識を全農が持ち、具体的に動き出していることを示しており、見落としてはならない項目だといえる。合わせて、ICTの活用など「デジタルイノベーション」についての考え方も読んでおきたいと思う。
リポートでは、各県本部の取り組みや広報活動、社会貢献活動、さらに全農が全国に展開する「お店」も紹介されている。
いずれにしても、これ1冊でいまの全農の姿が見えてくるというリポートだといえる。
(関連記事)
・農業労働力支援も課題-JA全農 (2018.03.28)
・営農管理システム「Z-GIS」が運用開始 JA全農(2018.04.24)
・農業の新しい時代に対応 Z-GISの活用を促進 JA全農営農管理システム操作研修会(2018.09.20)
・【山崎周二JA全農代表理事専務に聞く】農家手取り確保のため さらなる「自己改革」を(18.02.19)
・【座談会・「食」の発信 私たちから―全農直販グループ】取引先ニーズを正確に産地に マーケットイン型事業を実践(18.01.26)
・(064)(協同)組合組織の全体像を少しだけ考える(18.01.05)
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日