JAグループの農業DX促進を-アクセラレーターが成果発表2021年3月29日
(一社)アグベンチャーラボは3月26日、指名型アクセラレータープログラム「Plant&Grow」の成果発表会を東京・大手町の同ラボで開いた。発表会のほか、農業現場にデータを活用するアプリやシステムを開発しているスタートアップ企業代表が農業DXを実現するための課題などをトークイベントで話し合った。
成果発表会参加関係者で記念撮影
指名型アクセラレーターは「Plant&Grow」は、農業、地域社会が抱えるさまざまな課題解決をめざす企業のなかで、JAグループの持つ事業課題と親和性が高いテーマを設定し、公募ではなくアグベンチャーラボから指名した少数のスタートアップ企業を短期集中的に支援することを目的に新たなに設けられたプログラム。昨年11月に2社を採択し、4月間の間にJAグループのリソース活用と金融支援を通じて事業の加速を支援してきた。今回のテーマは生産・流通現場の「見える化・データ化」。採択企業はテラスマイル(本社:宮崎県新富町、)とkikitori(本社:東京都文京区)。
テラスマイルは独自の農業データ統合・解析ツール「Right ARM」を開発した。栽培データと市場動向など生産から販売までを見える化して経営を支援するもので生駒祐一代表は「Right ARMはデータを活用する場を提供するもの」と話す。第2期(2020年度)アクセラレタープログラムにも採択された。
テラスマイルの成果発表
成果発表では、この4カ月間でJAの営農指導員などを対象にしたデータ活用のためのコンサル研修や、JA全農のZ-GISと連携して栽培情報や出荷予測情報などを地図で表現するなど、より現場で分かりやすい農業指標の実証などを行ってきた。今後は労働生産性の向上にデータを活用するほか、4か月間同社の取り組みを支援したJA全農、農中職員の伴走者からは農場の「CO2排出量の見える化」などで持続可能な農業を推進するためのツールとしても期待されるのではないかと評価も出た。
Kikitoriの成果発表
Kikitoriは、野菜の生産者やJAの集出荷場、卸市場などとの入出荷連絡などさまざまな現場業務をデジタル化して、スマホで手軽に行えるアプリ「nimaru」を開発、提供している。同社自身でも青果販売業を行っており現場の実態を踏まえて開発を行った。組合員とJAとの間にはいまだにFAXや郵送による情報伝達の習慣が残っているがそうした伝票類の電子化を図る。また、JAの集出荷場向けにもデジタルサービスを行っており、JAの拠点間での情報共有とともに、生産者と運送会社などとのデータ連携も可能になる。伴走者からの評価は「現場での使いやすさ」。生産者、JAの現場が使いやすくなければ普及はしない。現場に入って課題を解決することの大切さが強調された。
2社の代表に加えて、農薬散布暦などスマホに記録できるアプリを開発したAgrihubの伊藤彰一代表、JA全農経営企画部JA支援課の丸野英喜氏も参加してトークイベントが行われた。
左から伊藤氏、生駒氏、上村氏、丸野氏
伊藤氏は農業DX(デジタル・トランスフォーメーション)が実現する条件は、どの仕事もデジタル化されていること。生産者から出荷、販売のどこかの段階が、たとえばFAX送信にとどまっていればDXは起きないと指摘した。その意味で「どこかの一社だけでDXは実現できない。」(上村氏)と多様な企業との連携の大切さも指摘された。
また、農業にはそもそもデジタル化が馴染みにくい印象を持ちがちだが、長い歴史を持つ農業分野には豊富な知恵の蓄積があるはずで、それが「見える化」することがデジタル化の一歩。スタートアップ企業は「農業者の頭になかにあるデータをコピーし、それをデジタル化してシステムに入れること」(生駒氏)だと話す。
丸野氏は「農家の宝に気づいていない。そこをスタートアップが気づく」ことにこのアクセラレータープログラムの取り組みの特質を見出し、チームとして農業DXに取り組む必要性を強調した。上村氏は「データを囲い込む時代は終わった。いかに共有して活用していくか、そこに新しい技術が必要だ」と話した。
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