【21年度JA全農事業計画】農業効率化や基盤強化2021年3月30日
JA全農は3月30日に臨時総代会を開き2021(令和3)年度事業計画を承認した。2019(令和元)年からの3カ年計画の最終年度で生産基盤の確立、食のトップブランドとしての地位の確立など五つの最重点事業施策の加速化を図る。コロナ禍での農業生産や消費行動の変化への対応や、社会的な課題をふまえたSDGs(持続可能な開発目標)への取り組みなど情勢変化をふまえた取り組みも進める。
取扱高4兆5000億円へ
3カ年計画の最終年度となる2021年度は、これまで進めてきた五つの最重点施策の実践を加速化する。
「生産基盤の確立」ではパートナー企業との連携による農作業受委託や、農福連携などによる労働力支援やブロック協議会の全国展開に取り組む。行動計画では新規に10県域で労働力支援に取り組み累計27県域とする。
また、地図情報に基づく営農管理システム「Z―GISや栽培管理システム「ザルビオフィールドマネージャー」などスマート農業技術の普及による生産性向上を図る。「ゆめファーム全農」での大規模施設園芸技術の実証とパッケージ化した設備、資材、技術の普及も図る。Z-GISはID発行数新規に1000を目標とする。
そのほか、輸出・加工業務用向けの農畜産物の産地づくりの強化、搾乳ロボットを活用した超省力化モデルの実証を通じた家族経営支援なども強化する。
物流合理化と購買品目の取り組みでは、青果物の広域集出荷施設や産地ストックポイントの整備、米の統一フレコンの導入普及、JA資材店舗の再編支援などを行う。
「食のトップブランドとしての地位の確立」では、グループ販売会社やファミリーマートなど資本・業務提携先との連携強化と「全農グループMD部会」での新たなブランド「ニッポンエール」の商品開発なども進める。さらに、直売所での国産原料を使用したエーコープマーク品の品ぞろえの拡充などで国産農畜産物・加工品の販売強化を図る。
また、コロナ禍で顕在化したEコマース(電子商取引)や宅配などの消費者ニーズに対応するため、JAタウンへのJA出店の促進強化や、無菌米飯の商品開発と販売拡大、冷凍青果物の製造や実需者への共同配送などの機能を持つ大消費地販売に向けた拠点整備も進める。JAタウンの取り扱いは2年度見込みの30億円を目標50億円とする。
生産現場には契約栽培による米の多収品種の生産提案や、日清製粉との提携を機に需要に応じた国産小麦の生産拡大も図る。
「元気な地域社会づくりへの支援」では、農産物直売所を併設したファマーズ型店舗の出店拡大による地産地消の強化、ファミリーマートとの提携によるJA生活店舗の業態転換や移動購買車の導入促進による買い物インフラ維持の支援を図る。農泊でのモデルJA拡大や専門ポータルサイトの運営強化などを進める。
また、燃料供給体制ではセルフSSの設置や、ガスキャッチ(LPガス安全化システム)の普及拡大と電力事業を核とするホームエネルギー事業の展開に向け「太陽光+蓄電池」の自家消費モデルの検証も行う。
「海外戦略の構築」では国内では今後の食料需要の減少が見込まれることから、オールジャパンでの輸出体制の構築に向けて役割を発揮する。具体策としては海外展開を積極的に進める小売り、外食などの企業との連携を強化し、マーケットイン型の輸出事業を確立する。海外拠点の拡充や、売り場を確保する産地間リレーの実践、多収品種の導入など低コスト生産の取り組みも行う。輸出は2年度136億円見込みを170億円を目標とする。
資材・原料の安定確保では、米国、ブラジル、カナダの関連会社を通じた現地での穀物集荷・調達の拡大と、調達先の多元化による肥料原料の安定確保に取り組む。
「JAへの支援強化」ではJA経済事業の部門・場所別収支分析をふまえた、全県域における「経済事業強化メニュー」の提案と実践、農林中金や信連と連携した「見える化プログラム(外部コンサルを活用した事業・収支分析にもとづく改善提案手法)」の導入による改善支援を強化。県域での水平展開と、「農家手取り最大化実践メニュー」の実践による生産者所得の向上などの取り組む。
そのほか被災地への営農活動の復旧支援、気候変動などへの対応と災害に備えた物資の備蓄や風水害に強い資材の導入なども進める。
取扱高は生活関連事業での石油の単価安やコロナ禍による需要減が見込まれるが、一方で園芸事業で2019(令和元)年度の台風被害からの回復による取扱数量の増加を見込み4兆5000億円を計画した。元年度実績比では101%。ただし、3カ年計画の3年度目標では5兆円としていた。
取扱高の増加による事業総利益の増加と、事業管理費を元年度実績並みに抑制することにより、事業利益は令和元年度実績を上回る水準となる計画。特別損益では保有施設の売却益など織り込み、当期剰余金は98億円とする。
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