コロナ禍で暮らしを守る 厚生連病院とJAが連携 文化連が研究会2021年12月2日
日本文化厚生連(文化連)は、11月26日、オンラインで「第25回厚生連病院と単協をつなぐ医療・福祉研究会」を開いた。コロナ禍のもとでの地域包括ケア、医療のあり方について講演と現地の取り組み報告があった。
研究会では、独立行政法人国立病院機構仙台医療センター臨床研究部ウイルスセンター長の西村秀一氏「暮らしと交流、店舗や施設運営はこうすれば安心」、社会福祉法人協同福祉会理事長の村城正氏が「コロナ禍における地域包括ケアとポストコロナの展望」のテーマでそれぞれ講演。また愛知県厚生連足助病院、熊本県JAかみましきが、それぞれ実践報告した。
「新型コロナの大誤算」などの著書で知られる西村氏は、新型コロナウイルスは呼吸器系のウイルスで、食べものや手、目鼻からは感染しないとして、一にも二にも換気、そして手洗いよりも、うがいの徹底を促す。手指の消毒は意味がなく、ビニールカーテンやアクリル板のパーテーションなどは空気の流れをとめるため、逆に感染リスクを高めるという。「ウイルスよりも怖いのは間違った知識の蔓延だ」と、ウイルスの正しい知識の周知徹底を強調した。
特別養護老人ホームを中心に居宅介護支援、定期巡回・随時対応型訪問介護看護、デイサービスなど、奈良県で幅広く事業を展開する福祉会の村城正理事長は、これからの医療と介護をめぐる動きについて話した。必要な基本的な方向として、(1)「地域包括ケアシステム」による町づくり、(2)「医療から介護へ」「施設から在宅へ」、(3)施設ではなく、住み慣れた地域で暮らし続ける―を挙げた。
また、同会は事業運営面で「LIFE(ライフ)」(科学的介護情報システム)を導入。これは全国標準のケアの質の物差しで、評価に必要な利用者の状態やサービス内容の幅広いデータを収集するシステム。「今後はLIFE運用のなかで、質の高い介護ができないところは運営が厳しくなるだろう」と指摘する。
単なる医療・介護施設ではなく、病院が地域のコミュニティの一部となっている愛知県厚生連の足助病院はコロナ禍で面会制限の中、共に寄り添う医療の取り組みを報告。面会制限の中でも、患者・家族との繋がりが大事と考え、昨年暮れからオンライン面会を始めた。このほか携帯電話での会話支援(ビデオ電話など)、遠方からの面会にはベッドごとホールへ運ぶなど、できるだけ患者・家族に寄り添った対応をしている。また看取り期の患者には、家族の記号に応じ、短期自宅療養を実現した。
同病院医療福祉相談課の名取彩実課長は「つながりで何ができるかを検討できた。今後は、見取りを含めた自宅療養での訪問診察(往診)や訪問介護など在宅体制の充実が必要。どのような状況下でも、共に寄り添う医療を目指す」と話した。
JAかみましきは「思い、笑顔、あなたらしい暮らし」を理念に地域包括ケアの介護事業を展開する。JA女性部の助け合い活動のから始まった事業で、同JA福祉部の杉本栄治係長は「女性部や組合員、利用者の声をどう形に変えていくかというところから始まった」と、組合員の困りごとの解決の中から生まれたことを強調。従ってモットーは「依頼があればなんでもやります」。小中学校での認知症学習会、年金友の会の集まり、JA女性部支部の総会など、依頼があればどこでも講師を派遣する。
また、コロナ禍で面会ができなくなったためタブレットによる面会体制を整備。この結果、本人・家族から電話による相談が増え、県外の家族と顔を見ながら面会できるようになり喜ばれているという。
研究会は、報告者と元日本福祉大学教授石川満氏、金城学院大学教授朝倉美江氏らを加えたパネルディスカッションで議論を深めた。
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