危機乗り越え 持続可能な社会へ 新春特別講演会と集いを開催 農協協会2024年2月29日
(一社)農協協会と農協研究会は2月28日、東京都内で新春特別講演会と新春祝賀パーティを開いた。4年ぶりの開催でJAグループ関係者など約150人が参加し盛会となった。
戦争をしている暇はない
新春特別講演会
新春特別講演会は「地球と人類の危機を乗り越えて踏み出せ! 持続可能な社会へ」をテーマに3人が公演した。
元外務省欧亜局長の東郷和彦氏は「ウクライナ戦争とイスラエル・パレスチナ戦争」について話した。ウクライナ戦争については、攻め込んだロシア側の論理を知ることが重要でプーチン大統領はウクライナのNATO非加盟と中立化、ロシア系ウクライナ人の保護が根本意識にあるとして、この条件を米国とウクライナが崩してきた歴史的な経過を解説。今後の見通しは米国大統領選が終わるまでは続くと話した。
イスラエル・パレスチナ戦争についても第一次大戦後、英国はアラブ人居住を支持する(フサイン・マクマホン協定)一方、ユダヤ人居住を支持する(バルフォア宣言)とった二枚舌外交など戦争の根源を理解することが重要だと話し、その後、昨年10月のハマスの蜂起に至る経過と現状を解説した。
東郷氏はいずれの戦争も停戦など見通しは立たないが、日本には「人の命の大切さを訴え一刻も早く戦争をやめることを求めるべき。第二次大戦の日本も半年早くやめていれば、どんなに多くの日本人を救えたか。国民一人一人が考える必要がある」など話した。
三重大学の立花義裕教授は「沸騰する地球・気候危機が生む負の連鎖」と題して講演。地球温暖化で北極圏の気温が上昇し赤道付近との温度差が縮まったことから偏西風の流れが遅くなり、それが日本付近での蛇行を生み、日本が世界のなかでももっとも熱い夏になっていることなどを解説した。
立花氏は地球温暖化が異常気象を生んでおり、放置すれば異常気象が「普通の天候」になり農産物にも多大な影響を与えると警鐘を鳴らすが「多くの人たちに危機感がない。戦争をしている暇などなく二酸化炭素削減に取り組まなければならない」と強調した。
日本労働者協同組合連合会の古村伸宏理事長は「労働者協同組合の経験から~協同労働が耕す"働き"の可能性」と題して講演した。
同連合会の宣言では、一人ひとりが主人公となる事業体が生活や地域で必要とされている課題を仕事にしていくを通じて、相互扶助や自治にもつなげることを強調している。それらの活動をもとにした労働者協同組合法は共益と公益を実現するもので住民参加、市民自治、当事者主体を価値観で地域づくりや仕事おこしに取り組めるよう法制化された。
とくに地域や家庭、学校などこれまでのコミュニティを立て直すための仕事づくりが協同労働として求められているなどと古村氏は強調し「日本の社会は多くの人があきらめ、お任せにしている。そこから抜け出すために仕組みが協同労働」などと指摘した。
講演会後に開かれたパーティでは農協協会の村上光雄会長があいさつ。国会の上程された改正基本法案について「現状は価格転嫁もできず農業は厳しい。農村の将来が危惧される。ヨーロッパ並みの直接支払い制度の導入は当然。堂々と自信を持って要求していくべき」と述べるとともに、今年10月の第30回のJA全国大会に向けて「農協協会としてもみなさんと議論を展開していきたい」と話した。
農協研究会の谷口信和会長は「日本社会に欠けているのは危機意識。改正基本法も国民的議論が盛り上がっていないなかで実現できるのか。生産者よりも消費者が問題とすることが大事だが、与党が粛々と改正案を決めた印象だ」と指摘し、「今後は徹底した議論で少しでも修正していくべき」などと話した。
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