【全中教育部・オンラインJAアカデミー】育成は"人としての成長"を重視 風通しのいいチーム作りを 東京ヤクルトスワローズ前監督・高津臣吾氏2026年1月20日
JA全中は1月15日、「オンラインJAアカデミー」をオンラインと会場参加のハイブリッドで開いた。東京ヤクルトスワローズ前監督の高津臣吾氏が「プロスポーツの現場に学ぶ個性を活かす人材育成と組織づくり」をテーマに、JA全中の若松仁嗣常務とトークセッションを行った。オンラインでは全国130カ所で視聴された。
東京ヤクルトスワローズ前監督の高津臣吾氏
高津氏は2012年に現役を引退し、14年からスワローズの一軍投手コーチに就いて以降、二軍監督を経て20年に一軍監督に就任。20年の最下位から、翌21年には20年ぶりとなるチームでは6度目の日本一、22年には2年連続でセ・リーグ優勝を果たした。多くの人にとって、プロ野球は「娯楽の一部」と述べ、12年間の指導歴を振り返り、選手の育成や優勝を目指すチームづくりを語った。
コーチは技術指導、監督はモチベーター
指導者時代を振り返り、「選手との出会いを大事にしながら、どう育てるのかを常に考えてきた」と語った。コーチと監督では、「まったく違うイメージで選手に接した」とし、「コーチに求められるのは技術指導。監督は組織として勝てる集団にする、モチベーターとしての役割を重視していた」と述べた。
選手の育成については、高卒ルーキーを例に、「野球選手としてだけでなく、人としての在り方やどう生きるか」を意識したという。「しぐさや態度はきちんとさせる。判定に文句を言う、エラーにふてくされるなどの行動には厳しく接した」。指導した選手を例に挙げながら、「謙虚で吸収能力が高く、常に向上心がある選手がプロで長く活躍できる」と述べ、「人としての成長が追い付かなければ一流とは言えない」と強調した。
一体感・連携を密に
JA全中の若松仁嗣常務(左)とトークセッション
現場とフロントを合わせて約200人規模の球団組織については、「チームが一つになって同じ方向、目標に向かうことが大事。一体感や連携が密につながり、組織として一つになること」を意識したと語った。自身を「モチベーター」と位置付け、「やる気にさせることが成長につながる」と強調。その象徴的な言葉が「絶対大丈夫」だ。首位との差が開いた際、移動バスの中で、選手時代に指導を受けた故・野村克也監督の言葉も借りて「自信を持ってもらうため」に発した言葉で、後に球団グッズにもなった。「負けが込んだときにネガティブなことは言わない。現状を把握し、個人がしっかりしないとまとまらない」と語った。
そのためのコミュニケーションでは、「プレーする選手と一番近くで接するコーチの存在が大きい。選手と監督の間でいいクッションになることが大事」と指摘。特にヘッドコーチについては、「何かあれば意見を求める、中間管理職のトップのような存在」と位置付けた。監督時代の嶋基宏ヘッドコーチについては、「人柄もよく、(今シーズンからヘッドコーチに就任した)中日は強くなる」と語った。
野球を楽しみ、迷いは見せない
コーチについても「育てる必要はあるが、自分の考えがすべてではない。不要なことは省いていい」としていたという。それは、「風通しのいい球団にしたかった」からだ。選手時代を振り返り、「野村監督とは話しやすく、『野球は楽しむもの』といつも言っていた」と述べ、監督としても「好きで始めた野球で努力してプロにたどり着いたのだから楽しんでほしい」と伝えてきた。コロナ禍では「毎日、発熱や体調不良の報告があり、判断を迫られ続けた」が、「楽しもうという気持ちは持ち続けていた」と語った。
球団組織では人事や選手起用も監督の仕事の一部だ。「選手登録は球団の人事。二軍から選手を上げるには二軍監督やコーチと相談する。難しいのは試合中の即断即決で、3、4球先まで考えていた」という。代打や代走についても、「少し前もって伝えないと準備できない」とし、スコアラーの意見も踏まえて事前に選手に伝えていた。監督は「迷う姿は見せてはいけない」とも強調し、神宮球場の狭いベンチでは「迷う声も聞こえてしまう」と明かした。
最後に来シーズンのスワローズについて聞かれ、「池山隆寛新監督は90年代を支えた選手で、二軍監督を6年経験し、チーム事情は把握している。頑張って立て直し、本来のスワローズの姿を作ってほしい」とエールを送った。
健康で心を豊かにしてくれるJAに
講演後の質疑では、「最下位から日本一への切り替え」について、「就任前に死んだようだった選手の顔が忘れられず、笑顔にしたかった。トップ次第でチームのカラーは変わる」と回答。「当たり前のことを当たり前に行う」ためには、「基礎、基本と心の準備が必要」と語った。「現役ドラフト」については、「新天地で花を咲かせるチャンスになるいい制度」と評価。
また、プロ野球選手としての「食べることへの関心」については、「選手も監督もストレスがたまる。遠征で地元のおいしいものを食べたり、仲間と呑みに行くことが息抜きになった」と語り、「おいしいものを食べることは生きる喜び。健康で心を豊かにしてくれるJAになってほしい」と参加者にエールを送った。
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