JAの活動:私の農協物語
【私の農協物語】元JA全中会長 萬歳章氏(下)農協などの株式会社化に断固反対貫く2022年10月3日
『農協解体』に抗して
自筆の書「農は国の基」
全中会長に就任したのは平成23(2011)年8月でした。平成27年までの4年間の任期中は問題・課題山積でした。就任した年の3月には東日本大震災があり、就任してすぐ被災3県を回り、JAグループを挙げた支援体制をつくりました。また当時はTPP(環太平洋パートナーシップ協定)が大きな問題になっていました。民主党の野田佳彦首相が交渉開始の意向を示した時期で、これに反対して我々JAグループは、国技館で6000人を集めて集会を開き、1100万人の反対署名も集めました。
翌年は第26回のJA全国大会です。そのとき大会議案に、福島における東京電力の原発事故を取り上げ、脱原発を目指すという方向を示して注目を集めました。当時、全中の副会長だった被爆地である広島県出身の村上光雄氏の提案によるものですが、命と暮らしを守る協同組合の使命として当然のことだと、農協のみなさんに受け止められたのだと思います。残念ながら、その後の大会では扱いが小さくなり、いつの間にか消えてしまいましたが...。
さらに平成24(2012)年は国際協同組合年でした。この時、協同組合憲章をつくるという動きがありました。その後どうなったのか聞いていませんが、新しい協同組合である労働者協同組合が法制化されるなど、協同組合の運動は広がりつつあります。すべての協同組合が力を合わせ、住みよい社会をつくろうという機運が高まっているのです。
任期中、何が大変だったかと言われると、「農協改革」の名による政府の農協攻撃です。正直に言って、玄関から土足で上がり込み、こうしろ、ああしろと言われるようなものでした。
政府は全農や農協の株式会社化も示しましたが、協同組合としてそれには断固反対を通しました。農協法では「株式会社に変更できる」となりましたが、そもそも民間の事業体である農協にそのような条文が必要なのかと思います。全中会長はICA(国際協同組合同盟)の委員でもあります。その意味からも、組合員の協同組合に対する期待に応えなければなりません。
全中に対する政府の組織変革は、農協解体の意図が感じられました。これまでの政策は政府と与党、JAの3者で話し合って決めていましたが、その流れを変えるため、言うことを聞かない農協の力を弱めてようということだったと思います。
そこで政府は最後に、一般社団法人にするか、農協の事業、組織の衰退につながる准組合員の利用制限をとるかの二者択一を迫られ、組織体を維持するため、残念ながら一般社団化を飲まざるを得ませんでした。
農協は総合性と系統性の二つが武器で、総合性は営農指導事業、購買・販売の経済事業、それに信用・共済事業、さらに生活事業と、総合的に事業を展開しているところにその特徴があります。政府の農協改革では、信用事業の代理店化によって信用事業を切り離し、営農経済事業で経営が成り立つようにしろというものでした。しかし、それでは農協組織は成り立ちません。
日本の農業の将来を心配しています。国は自給率アップのため、スマート農業を勧めていますが、かつてのような機械化貧乏にならないようにして欲しいですね。作業の機械化は省力化、効率化だけでなく、経営をよくするためのものでなければなりません。
また、経営が成り立つようにするには規模を大きくすることも必要ですが、農地の集積はなかなか進んでいないのが実情です。大規模経営や認定農業者だけでなく、小規模農家を含めた多様な経営体が成り立つような政策が必要ではないでしょうか。(聞き書き)
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