JAの活動:農協時論
【農協時論】今年の米情勢に思う JA共販を進め安定価格実現を 大林 茂松・JAグリーン近江組合長2024年8月26日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならないのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様に胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回は滋賀県のJAグリーン近江代表理事組合長の大林茂松氏に寄稿してもらった。
JAグリーン近江 大林茂松組合長
今、米不足が話題になっている。「令和6年6月末在庫量156万トンで統計を取り始めてから最小」「コメ17%高騰需給逼迫」「04年産以来の上昇率」「スーパー店頭から米が消える」などと新聞やテレビ、ネットをにぎわしている。
そんな中、わがJA管内でもいよいよ令和6年産米の収穫が始まった。
去る8月上旬に米生産者約200人が参加した情報交換会を実施したが、話題の中心はもちろん今年のJAの米概算金であった。
「今年は米が足らないので米は高くなるだろう」「JAはいくら支払うのか」「他の集荷業者は高く買いに来ている」「新聞紙上で他府県の価格も高いと言っている」などとともに「JAも頑張れよ」と生産者の表情には明るいものがあった。
でも、最近私には米のことで気になっていることが三つある。
一つ目は我がJA管内での米生産量(面積)の減少が続いていること。
JAグリーン近江は現在までに集落営農組織の法人化推進を強力に進め、今では140近い法人が活動している。
ただ、ここ数年の米の生産費はコロナやロシアのウクライナ侵攻などで大きく値上がりし、米価格はこのような比較的大規模な法人の生産コストをも下回っており、米から麦、大豆などにシフトしてきた。
少なくとも販売価格が生産費を上回らなければ米作りは続けられない。
二つ目が冒頭述べたように、今年の米の価格高騰である。
米価格が上がり、生産費を十分賄える利益が出ることは大いに喜ぶことであるが、過去を見てみると米価格が上昇すると消費が落ち込む、そのことに加えて生産量が増加し反動でさらに価格が下落する。
こんなことで日本の食料安全保障はどうなるのか、これでいいのか。今はいいがこれからのことが心配になる。
三つめはJAへの集荷率(量)の減少による販売力の低下である。
一つ目の心配で述べた通り生産調整等の影響があるものの、我がJAではここ30年余りで集荷量が100万袋(30㎏)から50万袋(30㎏)へと半減している。
数量による本来のJA共販のメリットが出しにくくなってきているのではないか。
滋賀県は近畿地方唯一の米輸出県である。県外に販売するには輸送コストや保管コスト等が必要になる。また数量をまとめることによる販売メリットなど、販売量が減少することによる共同販売共同計算のメリットが出せなくなってきているのではないか。
こんな悩みを抱えている中、先日総代研修会の講師に鈴木宣弘先生をお招きして講演をしてもらったが、農協共販で米は3,000円の価格向上効果があるとの話を聞き、昨年全中のJA研究賞を受賞した鈴木宣弘先生の著書「協同組合と農業経済・共生システムの経済理論」を読み直した。
私には難しい計算式などは分からないが、全中による受賞理由には「具体的に農協共販によって、例えば、米では 1 俵約 3,000 円、牛乳では 1kg約 16 円の生産者価格向上効果(消費者に対しても小売価格が抑えられる効果がある。)が発揮されていることを新たに開発した計量モデルで実証した」とある。
さらに、「取引交渉力のパワーバランスを 0~1 の数値で示し、0.5 を下回っていると農業サイドが買いたたかれていることを示す指標を開発して、ほとんどの品目で数値が 0.5 を下回り、農協共販の効果はあるものの、それでも、まだ、買い手側に有利な価格形成が行われていることを明らかにした。」とある。
近年全国的にJAへの米集荷は減少の一途をたどっているが、農業協同組合の最も重要なこのようなことをもっと組合員、生産者に伝え、JA共販の有利性をもっともっと生かす方法を考えなければならない。
改正された「食料・農業・農村基本法」に明記された食料の価格形成「持続的な供給に要する合理的な費用」に基づく生産者が再生産可能な適正な価格を自らが実現する方法の一つとして、このJA共同販売、共同計算をもう一度見つめなおし、今の実情に合った姿に変え、取引交渉力のパワーバランスの向上を通じ、生産者にも消費者にも流通業者にも安定した価格の実現を提案してみてはと思う。
今こそ日本の主食料である米の共同販売、共同計算を見つめなおし、「協同の成果」を実現すべき時ではないか。
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