JAの活動:農協時論
【農協時論】人的資本経営の時代 幸せ感じるJA 共に歩めば必ず 生川秀治・JAみえきた組合長2025年4月7日
「農協時論」は新たな社会と日本農業を切り拓いていくため「いま何を考えなければならいのか」を、生産現場で働く方々や農協のトップの皆様に胸の内に滾る熱い想いを書いてもらっている。今回はJAみえきた代表理事組合長の生川秀治氏に寄稿してもらった。
JAみえきた代表理事組合長 生川秀治氏
1. 人的資本経営
有価証券報告書への人的資本情報の開示が2023年3月決算から義務化されたことにより、約4000社ある上場企業の人的資本経営の状況が一斉に発信されることとなった。ステークホルダーに対する「人に関する重要な約束の表明」即ち人事や人材育成の仕組みから職場環境の整備まで、現状の報告と今後いつまでにどのように改善するのかを約束として提示することとなったのである。(ステークホルダーとは投資家、株主、従業員、求職者、取引先、地域社会など関係者全体をいう)当然、上場企業以外の会社や団体も従業員・求職者に対して「職員を大切にしている」とアピールしないことには人材が確保できない時代になってきており、全国的に人的資本経営の取り組みは急速に拡大している。
JAグループにおいては今のところ開示義務はないが(時期尚早と判断?)、2024年度から、まずはエンゲージメント(職場と従業員の関係性)調査から始めることとなった。企業のなかにはエンゲージメント調査結果を定期的に発表し、今後の取り組みや目標数値までを開示してアピールするところまであるようだが、JAグループにおける取り組みはJAごとに濃淡があり、全体としては遅れていると思われる。
2. 人手不足の時代
コロナ禍が収束してまだ2年、本当に人手不足なのだろうか。2024年の年初における労働需給ギャップは、ほぼゼロであった。それが今後徐々に拡大し、人手不足は2027年100万人、2030年341万人と広がっていく(リクルート調べ)。2027年になると人手不足を多くの国民が実感するといわれている。そう考えると中途退職者の増加や採用難は始まったばかりで、それを見越して民間企業は人的資本経営や初任給の引き上げに取り組んでいるのであるし、その傾向は今後も続くと思われる。JAグループにとって昨今の採用難は入り口に過ぎない。
3.JAのなすべきこと
(1) 人的資本経営
JAグループも人的資本経営を全面的に取り入れ、組織を生まれ変わらせることが必要ではないか。結局のところ人に投資し、職員の意識改革を進め、リーダーを育成して全体のレベルアップをはかる以外に組織を活性化する道はないのだから。
そう考えると、給与、退職金、福利厚生、人事制度、定年再雇用、中途採用、職員教育など、次から次へと抜本的に見直さないと時代に適応できなくなる。良からぬ話はすぐにSNSで拡散される今の時代、エンゲージメントを高めるためにはパワハラを始めとするハラスメント、強制残業、ノルマ推進などの横行は論外のこととして徹底的に排除し、心理的安全性を高める必要がある。そのうえで、民間企業と同じように、将来のなりたい姿に向けての具体的なスケジュールやエンゲージメント向上策、女性管理職比率など、数々の目標を数値化してゴールを目指していかねばならない。
(2) 効率化、集約化と成長戦略
少子高齢化が進むにつれ、特に地方において人口が減少し、農業者が減少することは避けられないことである。
JAの職員数も減少するのが自然であるが、そうならばJAの機能を維持して事業を継続するためにDXやAIを活用した効率化、集約化を進めることは当然で、組織整備も場合によっては視野に入れる必要がある。
一方で、効率化ばかりに偏っていては、JAとしての未来はない。現状を打破し、地域特性を生かした新たなビジネスモデルを策定して今後の成長戦略を打ち出すことが必須条件となる。
(1)と(2)を組み合わせ、職員に幸せと夢を与え、強くエンゲージメントを感じてもらえるJAを築いていかねばならない。もちろん、持続可能な組織であるために必要な利益を確保していくことは大前提である。
4.経営者の使命
2025年3月期決算は、全国506JAのうちかなりの数のJAが赤字になるといわれている。全国連の経営状況も大きな懸念材料である。協同組合の理念や特徴を生かしつつ、経営が厳しい中であっても職員にとって幸せな職場、働くことに幸せを感じるJAを築いていくことは簡単ではない。
しかし、大きな旗を振って目指す姿と、そこに至る道筋を指し示し、困難を乗り越えて夢を成し遂げることこそ経営者の使命ではないか。もちろん、経営者一人で出来るものではない。私は同じ志を持った役職員とともに「チームみえきた」としてベクトルを合わせ、共に歩んでいけば、必ずそれを実現できると確信している。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(146)-改正食料・農業・農村基本法(32)-2025年6月14日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(63)【防除学習帖】第302回2025年6月14日
-
農薬の正しい使い方(36)【今さら聞けない営農情報】第302回2025年6月14日
-
群馬県の嬬恋村との国際交流(姉妹)都市ポンペイ市【イタリア通信】2025年6月14日
-
【特殊報】水稲に特定外来生物のナガエツルノゲイトウ 尾張地域のほ場で確認 愛知県2025年6月13日
-
【注意報】りんごに果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 岩手県2025年6月13日
-
SBS輸入 3万t 6月27日に前倒し入札2025年6月13日
-
米の転売 備蓄米以外もすべて規制 小泉農相 23日から2025年6月13日
-
46都道府県で販売 随意契約の備蓄米2025年6月13日
-
価格釣り上げや売り惜しみ、一切ない 木徳神糧が声明 小泉農相「利益500%」発言や米流通めぐる議論受け2025年6月13日
-
担い手への農地集積 61.5% 1.1ポイント増2025年6月13日
-
【鈴木宣弘:食料・農業問題 本質と裏側】生産者米価2万円との差額補填制度を急ぐべき2025年6月13日
-
井関農機 国内草刈り機市場を本格拡大、電動化も推進 農機は「密播」仕様追加の乗用田植え機「RPQ5」投入2025年6月13日
-
【JA人事】JA高岡(富山県)松田博成組合長を新任(5月24日)2025年6月13日
-
【JA人事】JAけねべつ(北海道)北村篤組合長を再任(6月1日)2025年6月13日
-
(439)国家と個人の『食』の決定権【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年6月13日
-
「麦とろの日」でプレゼント 東京のららぽーと豊洲でイベントも実施 JA全農あおもり2025年6月13日
-
大学でサツイマイモ 創生大学と畑プロジェクト始動 JA全農福島2025年6月13日
-
JA農機の成約でプレゼントキャペーン JA全農長野2025年6月13日
-
第1回JA生活指導員研修会を開催 JA熊本中央会2025年6月13日