JAの活動:JAトップアンケート 今、農業協同組合がめさずこと
【JAトップアンケート】JA新ふくしま 菅野孝志代表理事組合長 「国民の合意形成を」2015年11月5日
JAグループは10月15日の第27回JA全国大会で「創造的自己改革への挑戦」のスローガンのもと、「農業者の所得増大」と「農業生産の拡大」「地域の活性化」に全力を尽くすことを決議した。これらの課題を全国各地で地域特性に合わせて実践していくには、各JAトップ層のリーダーシップ発揮が期待される。そこで本紙では「今、農業協同組合がめざすこと」をテーマにJAトップ層の考え、思いを広く発信しJA運動と事業の発展に資すればと考えアンケートを実施した。今回は、JA新ふくしまの菅野孝志代表理事組合長のご意見を掲載する。
JA新ふくしま
菅野孝志代表理事組合長
回答日:2015.9.30
【問1】あなたの農協では、農業・地域に対し、どんな役割を果たそうと考えておられますか。今後もっとも重要な役割だとお考えの内容をお書きください。
活力に溢れた地域農業と農村、活力ある地域・農協。その情景として田畑には、多くの老若男女が笑顔に溢れ将来と未来に大いなる可能性を感じ自信を漲らせている状況にすることである。当農協では、平成6年100億円あったJA管内の販売取扱額を復活するために(1)担い手の育成(2)地産地消推進と直売所事業(3)産地化品目育成に係る導入(4)生産振興への支援事業(5)農地再生事業(6)環境保全事業(7)食農教育事業等、JA綱領の1つに掲げる「地域の農業を振興し、わが国の食と緑と水を守ろう。」への取り組みこそ最重要課題であると捉えている。
JAの市民権の確立なくして、農業と農村そして地域・農協を守り育む絶対的な力(国民的な合意形成)など成し得ないと思うのである。その上での参加・参画の促進や社会貢献なのではないだろうか。
我々は、福島市川俣町農業再生機構の設立と地域の実態調査の上に荒廃農地の解消などに地元農業委員や農地中間管理機構との連携、さらに職員による「草刈り隊」の設置運営を進め30haの荒廃農地解消にあたっている。今後もさらに拡大するこことしている。将来にわたって世界的人口増の中にあって食料不足や飢餓そして貧困の状況が予測される時、日本の新自由主義的政策の遂行による勝手な判断のもとに、食や農の生産基盤であり付随する山・川・農地・海を衰退させてはならないと考える。
【問2】問1の役割を果たすうえで、今、農業・地域での最大の課題は何ですか。
一つに担い手の確保。二つに農業政策の安定性の確保。いわゆる農業政策の一貫性をどう確保するかであると言わざるを得ない。先の戸別所得補償制度のもと10a1万5000円は恒久化するものと思っていたが政権党が変わるや一変して経営安定対策と変容してしまったことに危機感を感じる。戸別所得補償制度は、大規模農家、若しくは地域の農地の総合的な活用を展望した中核的な農家などに農業の持続的な発展への可能性を拓くに有効に作用していたと考える(地域や経営体の次代の担い手の育成財源が確保できるのではないかとの感を抱いた)が、下支えするものが無くなり右往左往する事態になってきている。青年農業経営者や多様な農業人にしても、物づくり日本を支えてきた人を生かし育むことには、それ相応の時間と費用が掛かることは容易に認識できるはずである。承知の上での農業政策の一貫性がないことに憤りを感じる。とは言うものの、これらを跳ね返すためにJAの組合員とともに地域資源(ヒト・モノ・カネ・情報・歴史)を話のテーブルに引っ張り出し、検討実践策を構築することへの粘り強い取り組みが求められる。
【問3】問2の課題を解決するため、もっとも力を入れようと考えておられることは何ですか。
政策の安定度を高めるために国民的な合意形成への運動を展開することである。日本国の山・川田畑・海のバランスある環境は、世界的に優位性のあることを再認識することである。常平生暮らしの中に溶け込んでいる日本の自然や農地・環境・景観は長い歴史の中で受け継がれたものであり、また未来に受け継いで行くものでなければならない。日本の自然や農地・環境・景観が何時でも同じようにあるとの勘違いが横行していると言わざるを得ない。この認識を根本から変えることこそ「地方創生」を担うJAとしての自負と人と人の組織であり協同組合としての基本であると考える。
【問4】問3に関連して、第27回JA全国大会議案では「9つの重点実施分野」を掲げています。このうち課題を解決し、貴JAがめざす姿を実現するために、もっとも重要と考えておられる事項を3つあげてください。また、その分野において、どんな取り組みを考えておられるのか、具体的内容をお書きください。
c=付加価値の増大と新たな需要開拓への挑戦
(具体的取組内容)
二つの側面があるのではないだろうか。一つは、安定した品質の物を安定的に生産し、不慮の状況にも対応できるよう常に坦保することである。基礎食料としての役割から政策や国民的な合意に基づかなければならないものである。
もう一つは、農業者の所得増大のための付加価値の創造と増大である。その手法は、新たな需要の開拓としての直販事業や六次化であるが、生産現場あっての六次化と付加価値の創造である。それを可能とするのは、所得配分改善である。概ね90兆円と言われる最終消費額のうち農業生産額9兆円を12兆円前後にすることにより所得の倍増は可能となり、より永続的な生産体制が確保されるものとなる。いわゆる食による農の主権の奪還なのである。
e=新たな担い手の育成や担い手のレベルアップ対策
(具体的取組内容)
国の農業青年給付金制度などの育成に、一定の前進が見られることは、評価に値するものである。と同時にJAのスタンスとして組合員や利用者そして地域の方々の支えで多様な担い手を育成するという方向性がJAのトップ機関である理事会等の組織において確認され具体化することである。
地域は、限られた人材によって形成されているのでなく、地域に住み地域を愛する多くの人々により育まれていることの実証的展開が必要である。当JAとしても担い手給付金制度を創設し、今年度36人の農業者に経営改革への新たな品目や技術の導入等への挑戦に対し一人・一経営体あたり50万円を給付することとした。それは緒の部分でありレベルアップの手法としては、AST(TAC)や営農指導員・営農相談員・経済渉外員・労働保険事務組合の担当職員等の連携による日常の関わりをより強化し質の高い情報を提供し担い手の農業経営の質の向上にあたることである。
h=正・准組合員のメンバーシップ強化
(具体的取組内容)
組合員のアクティブ・メンバーシップとは、自らの意思により参加・参画しているJAにおいて確かな声・想いがキチンと議論され、速やかに事業化・運動化するという意味では「声なき声を聴き、組織事業運動化して行く」ことであると捉えている。
私なりに「聴くとは」=組合員の直の声と仕草や目、足取り等全体的な動きから感じ取れるように役職員力を研ぎ澄まさせること。「見るとは」=聴いたこと、聞こえてきたことを現場に出向き直に見聴きすることにより対応や対策等は画一的ではなく多様なものとなると考えている。「運動化とは」=協同組合としての定義・価値・原則に基づき社会的正義を誠実に果たしつつ、真摯に且つ本気で受け止め100人の方には、100通りの対応策があるということではないだろうか。
地域の農家住民を含めて総組合員(正・准)として存在することが必然・当然として受け止められた時代からの農業協同組合である。今、時代が家と言う「共同」から個人の「個」に変わりつつあり、その実態に寄り添うことを組織事業の柱として展開することに傾注してきたと言っても過言ではない。「共同」と「個」のバランスを保ちながら組合員主体の組織事業運動を展開することである。
前大会の「次代につなぐ協同」は、前々回の第25回JA全国大会に掲げた『新たな協同の創造』が着実に実践できていれば、つながり得たことである。「支店まつり」「支店だより」「准組合員のつどい」「女性部活動」「年金友の会」「ふれあいの会=旅行」そして農産物直売所の地域還元として管内小学校3年生の全教室へ「ちゃぐりん」の寄贈や地域協同活動顕彰である「環境保全活動顕彰」、福島市川俣町の教育委員会とも連携した「学校教育支援事業=農業体験・食体験・社会福祉体験・花育体験等」と拡がりを見せている。
【問5】第27回JA全国大会を機に、JAトップとして内外に発信したいお考えをお書きください。
人と人との協同組合として、第25回JA全国大会の「新たな協同の創造」、第26回JA大会の「次代につなぐ協同」と極めて重要な提言と行動計画を提示したと考えている。その間2012年の「国際協同組合年」、2014年の「国際家族年」、2015年の「国際土壌年」と密接に関係するものであると認識いたしている。我が国において、2010年8月協同組合組織代表者や知識人・文化人などで構成される2012国際協同組合年全国実行委員会が結成され「協同組合憲章」の案を検討し政府にその制定を働きかけてはとの提案があった。これらを踏まえ、2011年7月憲章検討委員会は、協同組合憲章草案(第1次案)を纏め広く意見を求め、修正を加え同年11月協同組合憲章草案(最終案)を決定した。2012年1月政府にその制定を求めることを確認したのである。今日的にその状況にないことは、農協法改正に見ることが出来るのである。が、世界の潮流を受け運動の展開が指向されねばならない。諦めることなく「創造的自己改革への挑戦」を。
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