JAの活動:第40回農協人文化賞-わが体験と抱負
【信用事業部門受賞】JA改革 広く発信を 櫻井宏・JAぎふ代表理事組合長2018年7月18日
7月5日に開催された第40回農協人文化賞で受賞された17名の方々に、これまでの農協運動の体験談と今後の抱負についてお書きいただきました。JAcomでは、その内容を数回に分けて紹介していきます。本日は信用事業部門で受賞した二人、今井長司JA柏崎経営管理委員会会長と櫻井宏JAぎふ代表理事組合長を紹介します。
平成24年に代表理事組合長に就任し、「農協は組合員の組織であり、組合員とともに地域を元気にすることが使命」という強い気持ちで、今日まで農業振興とともに地域社会の活性化に努めています。
◆ ◇
組合長就任当初から経営理念である「地域に信頼され、地域社会に一層貢献するJA」を実現したいという想いから、26年「地域活動支援基金」を創設しました。管内の農業、食文化、街づくり、環境保全等有形無形の地域資源を活かし、地域のイメージアップや活性化を図っている諸団体の活動を支援することを目的にしたものです。
耕作放棄地解消のための農機具購入や、農業イベントの活性化、食農活動などの農業振興を通じた街づくりなどに、目的積立金10億円を財源とし、毎年20団体、総額2000万円以内の支援を続けています。
農業面では、26年の米価大幅下落の時に、JA独自の米価下落緊急対策を行い、組合員4139名に対し、出荷1俵あたり1000円、総額1億1000万円の緊急助成支援を行いました。
米生産者にとっては、米価下落と収穫量減などが経営に大きな打撃を与えたことから、組合員の高い評価をいただきました。このような取り組みも含め、担い手農家をはじめとした生産者から大きな評価を得て、平成29年度は合併以来最大の米集荷実績となりました。他の農畜産物でも農業経営支援積立金を創設しました。
これは、農畜産物の販売価格の下落や生産資材価格が高騰した場合に生産者の再生産意欲を減退させないことを目的にしたものですが、さらに農業の発展のためには、生産拡大、新規就農、農業振興に関わる活動に対して支援するなど、その門戸を広げています。
◆ ◇
信用事業では、過去の組合員アンケートから「窓口や渉外のコミュニケーション能力、親近感がJAを利用する価値」との評価をいただいておりました。この強みを活かすため、組合員や利用者の目線に立った全部署でのCS活動、さらには相続や資産活用などの相談業務、訪問活動の強化に重点を置き、JAをより身近に感じていただくための事業展開を行うことに主眼をおきました。
その結果、組合長就任当時は貯金残高8149億円でしたが昨年度末には9830億円と、1兆円を目前にしています。また貯金残高を支える年金友の会の会員も年金相談会など積極的に実施し、4万2000名から4万9000名と大きく増加しました。
また、事業量確保による経営基盤安定のため融資にも注力してきました。JA自己改革の一環として、農業融資専門部署「農業経営サポート室」を平成28年度に新設しました。
加えて、管内の多様な農業者の経営支援、規模拡大を応援するため、無担保無保証の独自新資金「農業経営サポート資金(通称=アグリサムライ)」を設定し、借入希望者の事業性の評価に重きを置き、農業者応援の観点から融資を実施しました。その結果、当初9億7000万円だった農業融資残高がこの2年間で倍増し20億8000万円になりました。その他、住宅ローンの推進に特化したローンプラザを増設し貸出金残高を大きく伸長させ、事業収益基盤を確立しています。
◆ ◇
(写真)地域活動支援基金の審査会
24年6月からは岐阜県信連の経営管理委員会会長として、県域に就農意欲の喚起と就農後の農業経営安定のための新規就農支援施策として、JAグループの担い手育成事業にかかる研修を受講した新規就農者を対象に、農業経営開始直後の営農サポート資金を給付する「新規就農応援資金給付制度」を開始しました。
さらに、県内の農畜産物直売所の生産者を応援するため、「JA農畜産物直売所応援定期貯金」の販売、「JA農畜産物直売所スタンプラリー」を開始し、県下一体となった直売所利用活性化による農産物の消費拡大、および県下JA貯金残高の伸長に取り組みました。
また、農業関係団体との連携の取り組みとして、岐阜県農業法人協会、岐阜県JA担い手サポートセンターおよび農林中央金庫名古屋支店と、県内農業法人に対する金融支援強化、経営支援ならびに県内農業の、さらなる発展を目的とした「包括的なパートナーシップ協定に関する覚書」を全国で始めて取り交わしました。
JA自己改革実践の最終局面を迎え、年明けには全国一斉に全組合員アンケートが実施されます。当JAでも、自己改革の完遂とともに、その取り組みを組合員の皆さま方に理解いただき、評価いただくため平成30年度は3度の訪問・対話を予定しています。
昔から「JAはPR・広報が下手だ」と言われてきましたが、JA自己改革を広くPRし、多くの組合員から「地域になくてはならないJA」と言っていただけるよう取り組んでいきます。
【略歴】
(さくらい・ひろし)
昭和26年生まれ。
昭和49年岐阜市農協入組。平成20年合併してぎふ農協へ。21年ぎふ農協常務理事、24年同農協代表理事組合長・岐阜県信用農協連経営管理委員会会長、同農業信用基金協会会長理事、岐阜農協中央会会長に就任。
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日