JAの活動:JA全農の若い力
【JA全農の若い力】農家の目線で豚の品種改良(1) 上士幌種豚育種研究室 岩田修治さん2025年2月13日
JA全農・資料畜産中央研究所の上士幌種豚育種研究室は、北海道のほぼ中央、大雪山東山麓の雄大な大地に立つ。優良系統豚の造成、豚の遺伝子診断に関する研究、豚の人工授精に関する研究、豚の胚に関する研究に取り組んでいる。
岩田修治さん(2023年度入会)は、生まれ育った埼玉県を離れ上士幌に赴任した。
大学は獣医学部で、学部と大学院でウイルス学、分子細胞生物学を学んだ。博士号を取り大学院を出たのが28歳。就職活動中、全農の就職説明会で聴いた豚の品種改良の話に興味を惹かれた。
「豚の能力を根本から上げる。そんなことができるんだ」
豚の品種改良は5~7年間かけ、交配、分娩、育成、選抜を繰り返し、肉質や繁殖性にすぐれた豚を育てていく。種豚育種研究室で岩田さんが取り組むのが3つの品種を掛け合わせた三元豚のもととなる3品種のうち、発育と肉質に優れるデュロック種の改良である。
「要は少ないエサで早く大きくなっておいしい肉になることです」と岩田さんは言う。
超音波で豚の断面を撮影し背中の脂肪の厚さを測ったり、遺伝的能力を計算したりと、豚の能力を「総合育種価」として数値化する。そんな最先端の育種だが、仕事の多くは畜舎で行う。岩田さんも毎日、豚舎で豚にエサをやったり超音波で検査をしたり。獣医でもあるので、病気を治すこともある。
総合育種価の点数が高いからといって良い豚、とは限らない。いくら肉質や生育が良くても、脚が悪くてちゃんと歩けなければ農家が困る。自分たちで豚を育てるのはそうした「農家さん目線を持てる」意味もある。
「豚はかわいいですね。デュロック種は丸っこい顔をして犬みたいです。治療した豚が元気になるとうれしいですし」と岩田さんは笑顔を浮かべた。
100キロになるまでどのくらいのエサが必要か。それを調べるため、エサを測り、豚の体重も測る。体重計に豚を乗せるのも数人がかりの大仕事だ。
「豚肉の好みも国によって違います。全農は日本の農家さんのためにあるので、日本人の好みにあった豚を育種しています。抗病性といった要素も重要になっています」。
早く育っても味が落ちていないか。どうしたら病気に強くなるか。もっとおいしくできないか。育種に終わりはないが、そのスピードを高めたのが遺伝的品種改良の手法だ。
「ゲノム情報を育種に活用することで、改良速度が上がりました。機械学習や画像診断などAIの活用も進むと思います」
岩田さんは「全農は生産者と消費者との架け橋」と実感しているという。その研究部門で豚をかいながら働く中で「農家目線を持って数字も見られる」ようになった。全農グループの農場にも足を運び、育種研究室が送り出した豚の子どもたちのその後を見る。問題があればフィードバックし、改良を重ねる。
「農家が飼いやすく収益が上がり、消費者もおいしい」。北の大地からそういう豚を送り出すことを通じて岩田さんは、「全国規模のスケールでの農の課題解決」に励んでいる。
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