JAの活動:【Never Give Up! 新時代へ前進あるのみ 第71回JA全国青年大会特集】
【青年大会特集座談会】国の礎「食」を支える自負を(3)京大藤井聡教授・田中均組合長・久保田治己氏2025年2月28日
第71回JA全国青年大会に合わせて青年農業者の奮起に期待を寄せて座談会を企画した。参加者は多彩な言論で活躍する京都大学教授の藤井聡氏と長野県JA松本ハイランド組合長の田中均氏、そして食料安全保障推進財団専務の久保田治己氏に進行役を務めてもらった。
JA松本ハイランド組合長 田中均氏
"農政改革"モノ申そう
久保田 農協グループは自民党の支持基盤的に思われてきましたが、あまりおもんぱかっていると農家がつぶれてしまいます。そこを上手に、所得補償を実現し若い人たちに夢を与えていくにはどう仕掛けたらいいでしょう。
田中 少し別の話になるかもしれませんけど、農協の理事は必ずしも専業農家ではないのです。うちには理事が45人いますが、そのうち農業で生計を立てている人は半数以下でしょう。専業農家は農協の理事をやってられない。私は専業農家ですが、農協の非常勤理事になるといったら「実家に帰らせていただきます」と妻に言われました。半分冗談でしたが、私が昼の会議に出たら、彼女にその分仕事がいく。専業農家の代わりに出てくる理事は、会社や行政を定年になったみなさんです。黙っていたら何も出てこないので、働きかけが必要です。
藤井 私の考えには根拠となるデータがあります。農産物の関税では、日本の平均関税率は12%です。EUは20%、スイス51%、韓国67%、ノルウェー123%です。日本より低いのは6%の米国くらい。日本の農家はほぼ丸裸で国際競争にさらされています。
戸別所得補償を含めた個別農家支援はどれくらいかというと、日本の農業出荷額に対する政府支出の比率は27%です。大雑把にいえば農家所得の27%は政府からの補助分です。そう聞くと「過保護だ」と感じる人もいるでしょうが、諸外国はもっと高い。英国42%、フランス44%、スイス62%で、米国は65%です。
米国の農家は収入の65%が政府支出、ということは「3分の2公務員」みたいなものです。だから関税が低くてもやっていけます。ところが日本は関税も政府補助も世界最低水準なので、ほとんど農家に対する虐待の様な事を政府がやっている。ところが、このことを知っている農家はほとんどいません。
【出典】政府支出対農業産出額:「よく分かるTPP48のまちがい」
(鈴木宣弘 ・木下順子著 農文協2011.12)、食料自給率:農林水産省ホームページ
田中 少ないですね。
藤井 その状況が自分の首を絞めているのです。現状を打開するため、農協に「青年言論政策委員会」のような組織を作ってはどうでしょう。講演会を開くとか、政治家と交流するとか、申し入れに行くとか。農協もしていると思いますが、もう少しアグレッシブに動いていく。
田中 さっきも言いましたけど、専業農家のみなさんは忙しくて農協の役員になりたがりません。会社の定年が60歳から65歳に伸び「定年後に農業を始める」ハードルが上がったのも頭が痛い。農協が政治にコミットしていくためにも、青年のみなさんには、ぜひ中に入って活動していただきたいと思います。そこから活力が生まれます。
藤井 「一人で国を動かすことなど無理だ」と思う人が多いでしょうが、そんなことはありません。一人が本気を出して継続的に動いていけば、山が少しずつでも動くことがある。例えば私は一介の大学教授に過ぎませんが、それでも法律成立や消費増税阻止 大型政府対策の実現に貢献したことが何度もあります。農協の若い人は大勢いるので、いくらでも世の中変えられますよ。「眠れる獅子(しし)」のまま屠(ほふ)られて終わるのではなく、立ち上がる時だと思います。
久保田 私が書いた『農協が日本人の"食と命"を守り続ける』のメッセージもそこでした。農協には1000万組合員がいるので、動けば大きな力になります。自分の農家経営をしっかりするのが大前提ですが、その上で、日本全体を良くするよう若い人たちには一肌脱いでいただければと思います。本日はありがとうございました。
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